★★★☆☆
あらすじ
紀元前1300年。エジプト王族の一員として育ったモーゼは、ひょんなことから自身が奴隷たちと同じヘブライ人であることを知る。
旧約聖書の出エジプト記を題材にした作品。150分。
感想
王族の一員として育つも奴隷と同じヘブライ人であることが明るみになり、追放された男、モーゼが主人公だ。説明が少なく、状況を把握しづらい場面が多かったが、キリスト教徒なら当然知っているはずの聖書の物語を題材にしているからだろう。見る前に出エジプト記の概要くらいは知っておいた方が良さそうだ。
見る前はなんとなく、激しい戦闘が繰り広げられる戦記物かと想像していたのだが、実際には戦いのシーンはほぼ無い。聖書を題材としているので神の行いや主人公と神の対話等がメインに描かれていく。
エジプトを追放された主人公は、家族を作り平穏に暮らしていたが、奴隷となっている同胞を解放するようにと神の啓示を受け、エジプトに戻ろうとする。
当然家族は反対するのだが、主人公が神の啓示だと言っているのに、信心深いはずの家族が全然納得しようとしないのは不思議だった。そこは神の啓示だから仕方がない、と引き下がるところではないのだろうか?神を信じているのに神の言ってることは聞けない、と言っているのは大いなる矛盾に感じる。
エジプトに戻った主人公は、同胞たちと奴隷解放のためのレジスタンスを始める。それなりにうまくいっていたのに、神はそれでも足りないと不平を言い、自ら様々な災厄をエジプトにもたらしていく(十の災い)。
神の怒りを買うとか、罰が当たるとか、神様がお仕置き的なことをするのはどんな宗教にもだいたいあるが、これでもかと人々を叩きのめす徹底ぶりには引いてしまうものがあった。これが神様とは、きっと日本と欧米では「神」のイメージがずいぶんと違うのだろうなと想像してしまう。
クライマックスは有名な海が割れるシーンだ。思っていたよりも劇的ではなくて拍子抜けしたが、自然で現実的な描写を目指したからなのだろう。地震による引き潮だったという解釈のようだ。ただスケールのデカい映像自体は迫力があった。
その他にも「十の災い」の始まりとなったワニの襲撃シーンはホラーで怖ろしかったし、崖の細い道を戦車で疾走するシーンは落ちてしまわないかと冷や冷やさせられたしで、随所にあるスペクタクルなシーンは見応えがある。ただ主人公が何かをするわけではなく、ただ神の行いを見守るだけの形のものが多かったので、なんとなく物足りなさが常にあった。気分が高揚するようなシーンがない。
スペクタクルなシーンもそこまで多いわけではないので間延びした印象があり、次第に2時間半の上映時間の長さが気になってくる。信仰心と共に見るならまた違ってくるのかもしれないが、スペクタクルはあっても面白みは少ない宗教映画といった趣だ。
スタッフ/キャスト
監督/製作
脚本 アダム・クーパー/ビル・コラージュ/ジェフリー・ケイン/スティーヴン・ザイリアン
出演 クリスチャン・ベール/ジョエル・エドガートン/ジョン・タトゥーロ/アーロン・ポール/ベン・メンデルソーン/シガニー・ウィーバー/ベン・キングズレー/マリア・バルベルデ/ヒアム・アッバス/ユエン・ブレムナー/インディラ・ヴァルマ/ゴルシフテ・ファラハニ/ガッサーン・マスウード/タラ・フィッツジェラルド