★★★☆☆
あらすじ
「ハワーズ・エンド」に別荘を持つ実業家のもとに、後妻として嫁いだ女。
感想
「ハワーズ・エンド」という土地がカギとなり、巡り巡る群像劇だ。だからといってこの土地が常に皆の中心にあるというわけではなく、無意識下にあって時々浮上してくるだけ、というのが面白い。あとから考えると全部あの土地の事が関係していたかも、と気づくような展開だ。死んだ妻がその後の家族を翻弄したことになる。
基本的には群像劇だが、最初はそんなに目立たなかったアンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソン演じる男女が次第に物語の中心に位置するようになる。この流れも、ぼんやりとしていた焦点が段々とクリアになっていくようで面白かった。
しかし、エマ・トンプソン演じる女性が、仲良くしていた女性の死後にその夫の後妻になったのは少しゾッとしたし、意外な感じがした。ただ皆のリアクションを見るとあまり驚いた様子もなかったので、当時こういったことは割とよくあったのかもしれない。それでも、考え方が全然違うのにどこに惹かれたの?と納得できない気分は残るが。
保守的な夫の一家、進歩的な妻の一家、両家の考え方の相違が物語を生んでいく。時に衝突し、大きな危機を迎えたりしながらも、最終的にはなんとかまとまりを見せる両家。ただ、かかわりのあった労働者階級の男の妻のその後については一切触れていないのが気になった。これだとまるで「金持ち同士は何とかなりました、貧乏人は知らんけど」みたいな、まるで自分たちの事しか眼中にないようで感じが悪い。
クラシカルで優雅な雰囲気のある映画で、役者陣の演技も良く、悪くない映画だ。だが上品すぎて、少しテンポがのんびりし過ぎているように感じてしまった。ただこれはおそらく観る側が忙しない気分でいるからで、心の余裕がある時に観ればそれが心地よく感じて、きっと楽しめるはずだ。
スタッフ/キャスト
監督 ジェームズ・アイヴォリー
脚本 ルース・プラワー・ジャブヴァーラ
原作 ハワーズ・エンド (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-7)
製作 イスマイル・マーチャント
出演
ヴァネッサ・レッドグレーヴ/ヘレナ・ボナム=カーター/エマ・トンプソン/ジェームズ・ウィルビー/サミュエル・ウェスト/ジェマ・レッドグレイヴ/プルネラ・スケイルズ/サイモン・キャロウ