★★★★☆
あらすじ
湖畔の町でひと夏を過ごすためにやって来た、創作意欲を失った老作家と隣人たちの交流。
感想
ロブ・ライナー監督による「最高の人生の」シリーズ第2作目。と思うのは日本人だけで、実際は作品間に何の関連性もない。原題は「The Magic of Belle Isle(ベル・アイルの魔法)」なので、邦題がひどい。多分、悪ノリしてる。
トラックの荷台に車いす用のスロープを乗せ、家にタイプライターを運び込もうとすると悪態をつき、部屋の中で突然叫び、酒を要求する。冒頭だけでモーガン・フリーマン演じる主人公である作家のキャラクターを説明してしまっていて上手い。主人公の人となりが呑み込めたのですんなりと物語に入っていける。
愛する妻を失って創作意欲もなくなり、ただ酒を飲んで過ごす老作家。そして頑固で偏屈かと思ったらそうでもない。作家らしい知性を感じさせながら、自己主張しつつ無礼にならない態度を取る。このあたりは人付き合いの礼儀を重んじる欧米だからなのかもしれない。隣に住む母親と三人娘の家族を中心に交流が始まる。
この交流は主人公が名の知れた作家だから可能だったというのはある。だからこそ隣人たちは彼に興味を持ち、気さくに話しかけ、安心して子供たちと交流させた。これが一人暮らしで酒ばかり飲み、ときおり大声をあげている、車いすの普通の老人だったら、こんな交流は生まれなかっただろう。
隣人たちとの交流により主人公に創作意欲が湧いてくる。特に隣に住む一家の真ん中の娘に創作の方法を教え、イマジネーションの重要さを説いている間に、自分もそれの素晴らしさを再発見するという流れが良かった。想像の翼を広げることで、生きる気力も湧いてくる。
隣の三人娘たちを十把一絡げな描き方ではなく年代ごとにちゃんと描写して、主人公の接し方もそれに応じて変えているのもリアリティがあった。それぞれの小さなエピソードに起承転結があり、最後もうまくまとまっていてストレスなく見られる映画だった。最後に少し、主人公と三人娘の母親との関係をぼやかされた気もしたが。
スタッフ/キャスト
監督/製作
出演
ヴァージニア・マドセン/エマ・ファーマン/マデリン・キャロル/キーナン・トンプソン/ケヴィン・ポラック/フレッド・ウィラード