★★★☆☆
あらすじ
賭博ビジネスで力をつけ、世界を牛耳ろうとする小さな国家に命を狙われ、刺客を次々と送り込まれるギャンブラー。
小林旭主演の黒い賭博師シリーズの第8作目で最終作。
感想
凄腕のギャンブラーである主人公に襲い掛かるのは、賭博ビジネスで稼いで世界での存在感を示そうと野望を抱く小国家だ。手始めとしてまず日本に秘密のカジノを作り、この国の富を吸い上げようとする。全く映画とは関係ないが、これって今大阪がやろうとしている外資によるカジノへの警鐘?と思ってしまった。
主人公は、小国家の賭博ビジネスに邪魔な存在だと警戒され、次々と刺客を送り込まれる。彼を消したいのなら普通に殺し屋でも雇えばいいのにと思ってしまうが、ちゃんとギャンブルで勝負をつけようとするのが律儀で面白い。どうせ彼を倒すまで刺客を送り続けるのだろうから、負けたら死んでもらうなんてまどろっこしいように思えるが、一種のスポーツマンシップみたいなものだろうか。
送り込まれた刺客たちは皆個性的だ。その中でも天才的才能を持つ少年の刺客はインパクトがあった。ジュディ・オングが天真爛漫に演じており、彼女が登場するシーンだけは往年の香港映画の面白コメディー的な香りがあった。身長も低いので本当に少年みたいで、印象に残る良いキャラだった。
小国家の上位三人のギャンブラーたちを主人公は次々と倒していく。演じる小林旭は男前でカッコいいが、あれ?カッコいいか?と思ってしまうような際どい瞬間もあり、おそらくこの脆さや儚さを感じさせるところが良いのだろう。完璧な男前はすぐに飽きるが、彼のようなタイプはやっぱり男前だよな?と再確認するために何度も見たくなる。
豚を使ってイスラム教徒の小国家の人々をおちょくる場面はやり過ぎだったが、コテコテの日本人英語を喋る彼らの描写はなかなか味わい深いものがあった。これくらい開き直って堂々とやられると、こんな国あるかも、という気がしてくる。
それから主人公に負けたギャンブラーたちをあっさりと粛清してしまうのは、人材を使い捨てする日本的発想がよく表れているように思えた。小国家がそんなことしてたらすぐに人材難になっちゃうよ、人は宝だよ、と心配してしまった。
ギャンブル勝負が中心で、派手なアクションシーンはクライマックスだけだったが、ここで主人公がほとんどカメラを背にして、観客に尻を向けたまま戦い続けたのには困惑してしまった。最後にカメラに向かってキメのポーズをとるための前振りかと思ったがそれもなかった。
外資のカジノの件だったり、コンピューターは人間に勝てるのか?という問いかけがあったりと、なんとなく今でも通用しそうなトピックを取り上げているなと感心してしまう60年前の映画だった。
スタッフ/キャスト
監督 中平康
製作 児井英生
出演 小林旭/二谷英明/鈴木やすし/ジュディ・オング/谷村昌彦/郷鍈治/原泉/大泉滉
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前作 シリーズ第7作