BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ルクス・エテルナ 永遠の光」 2019

ルクス・エテルナ 永遠の光(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 魔女狩りを描く映画を撮影中の現場は、不満が渦巻き、人々が入り乱れ、混迷の様相を増していく。

www.youtube.com

 

 シャルロット・ゲンズブール、ベアトリス・ダルら出演、ギャスパー・ノエ監督。フランス映画。51分。

 

感想

 映画の撮影現場を舞台にした短い映画だ。最初は上手く状況が飲み込めなかったが、スタッフやキャストの不満が渦巻き、勝手に人が出入りするような、まったく統率の取れていない現場であることが分かってくる。紛れ込んでいた記者を名乗る男が、スタッフのお父さんだったのは可笑しかった。

 

 その他にも監督の解雇を目論むプロデューサー、そんな動きに反発する監督、さらには子供の事件が気になる主演女優など、不穏な空気はどんどんと増していく。その中で行われる魔女の磔シーンがクライマックスだ。不測の事態が起きたにもかかわらず、撮影は強行される。

 

 

 激しい光の点滅に落ち着かない気分になり、なんだか怖くなるが、その先には恍惚の瞬間が訪れそうな気配もある。映画冒頭に紹介されたドストエフスキーの言葉を追体験するかのような展開だ。

 

 前振りをした後で、まず暖炉の前で女優二人がリラックスした雰囲気で会話する様子を描き、それから混迷していく撮影現場の様子を映し出していく。徐々に心をざわつかせるような、観客の心を巧みに操る構成だ。そんな心理状態にさせられてから迎えるクライマックスだからこそ、説得力があった。

 

 芸術は、快適でクリーンな場所から生まれるとは限らない。こんな不快でカオスな現場だからこそ生まれることもある。なんとなく理解できるが、昨今の映画界のスキャンダルなどを考えると、これは不都合な真実であるのかもしれない。昔の映画には、今だとアウトな撮影現場の逸話も色々とある。

ハラスメントや性加害が横行する「映画界」を変えるには?白石和彌監督が語る「現場の取り組み」と「表現の自由」(大西 展子) | 現代ビジネス | 講談社

 

 だからちょっとぐらい良いだろうというわけにもいかず、色々と考えてしまう。自分も芸術には普通ではないもの、常識からはみ出た狂気みたいなものを期待しているところがある。難しい問題だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 ギャスパー・ノエ

 

出演 シャルロット・ゲンズブール/ベアトリス・ダル/アビー・リー・カーショウ/クララ3000/クロード・ガジャン・マウル/フェリックス・マリトー/フレッド・カンビエ/カール・グルスマン/ローラ・ピリュ・ペリエ/ルー・ブランコビッチ/ルカ・アイザック/マキシム・ルイス/ミカ・アルガナラズ/ポール・ハメリン/ステファニア・クリスティアン/トム・カン/ヤニック・ボノ

 

ルクス・エテルナ 永遠の光(字幕版)

ルクス・エテルナ 永遠の光(字幕版)

  • シャルロット・ゲンズブール
Amazon

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com