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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「アメリカの夜」 1973

映画に愛をこめて アメリカの夜(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 様々なトラブルに見舞われながらも、なんとか映画を完成させようとする映画監督。フランス映画。アカデミー賞外国語映画賞。

 

感想

 映画の撮影現場の様子を描いた物語だ。様々な撮影手法を用いる様子が描かれ、映画でよく見るシーンがどのように撮影されているのかが分かって興味深い。また、ベタではあるが動物が思うように動いてくれず、なんどもNGをくり返す様子は思わず笑ってしまった。色々と出てくる撮影時のちょっとしたエピソードは、映画界の有名な逸話や監督自身の実際の体験が盛り込まれているそうだ。

 

 そして、監督やスタッフ、役者らが繰り広げる人間模様も面白い。映画には大勢の人が関わり、そのひとりひとりにはもちろん感情がある。彼らが一つの場所に集まって一つのものを作り上げようとすれば、色々な思いや感情が交錯してトラブルが起きてしまうのは仕方がないことだと思えてくる。あちこちで次々と問題が起きる様子には妙に説得力があった。

 

 

 各所で起きるトラブルに対して、基本的には誰も怒らないのが印象的だ。きっといちいち目くじらを立てて怒ってしまうと角が立ち、また新たなトラブルの種が生み出されてしまう。これ以上最悪のケースが起きないように、とにかくなんでも穏便に済ませることが得策だ、というのが長年の映画スタジオの歴史から現場が学んで身に付けてきた知恵なのだろう。

 

 ただ映画の現場は、それぞれの担当がはっきりとしたプロの集まりなので、あいつは何もしていない、みたいな不満はたまりにくいのかもしれない。皆も自分の仕事はプロフェッショナルにこなしている。恋人を現場に連れ込み、幼稚な振る舞いを見せていたジャン=ピエール・レオ演じる役者ですら、カメラの前では見事な演技を見せていた。

 

 とはいえ彼は途中で現場を放棄しようとするのだが。だがそれも、自分の精神状態が最高の仕事ができる状況ではないと、プロとしての判断をしたからなのかもしれない。

 

 そんな数々の問題のすべてを相談され、その場で対処を迫られる監督の気苦労は、見ていると胃が痛くなってくる。良い映画を作ろうという彼の意気込みが次第に、とにかく映画を完成させることに変化し、トーンダウンしてしまうのも理解できなくはなかった。

 

 困難を乗り越え、映画撮影を続けようとする彼らの姿から見えてくるのは、映画に対する愛情だ。監督が幼い頃の映画に対する情熱を思い出していたが、それぞれの根底にある映画愛が彼らを突き動かしていることがよく伝わって来る。

 

 映画作りはなんとなく文化祭の準備と似ている。仲間と共に長時間作業し、当日の来場者の反応を想像したりして、皆ハイな状態になっている。非日常的な日々に気分が高揚し、恋愛感情や友情が盛り上がる。大人になってからもそんな祭の気分を味わえるなんて、そりゃ映画作りは魅力的で止められないよなと思ってしまった。

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スタッフ/キャスト

監督/脚本/出演 フランソワ・トリュフォー

 

製作総指揮 クロード・ミレール

 

出演 ジャクリーン・ビセット

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ヴァレンティナ・コルテーゼ/ジャン=ピエール・オーモン/アレクサンドラ・スチュワルト/ナタリー・バイ/ベルナール・メネズ

 

音楽 ジョルジュ・ドルリュー

 

撮影 ピエール=ウィリアム・グレン

 

アメリカの夜 - Wikipedia

 

 

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