★★★☆☆
あらすじ
リムジンを楽屋に、様々な現場で様々な役を次々と演じていく男。
感想
次から次と様々な役を演じていく男。最初は訳が分からないのだが、2つ目のモーションキャプチャーで演じるシーンくらいまでは、訳の分からない面白さがあった。シュールというか、やっている事の落差というか。
ただ物語の仕組みが分かり始めてくると、逆にそれを読み解こうとしてしまってしんどさも出てきてしまった。色々な解釈が出来るような物語で、取り合えず分かるのは映画へのオマージュだということくらい。オープニングが古い映像で、さらに映画館からスタートということで、主人公は映画自体を演じているのかもしれない。
もしくは、途中で主人公が「昔はカメラがでかかったのに、最近は小っちゃくなっちゃって…」みたいなことを言っていたので、本当にただ映画の撮影現場を掛け持ちしているだけなのかもしれない。彼の演技をどこかから見えないくらいの小さなカメラで撮影して。
それからこれは見終わった後で知ったのだが、冒頭に登場する人物は監督のレオス・カラックス自身。彼が謎のドアを抜けるとそこは映画館だったので、監督が様々な映画の構想を練っているとか、映画への想いを具現化しているということなのかもしれない。きっと正解はなくて、これらの要素が織り交ぜられたものだと思っておけばいいような気がする。
主人公が演じる様々なシーンの中では、突然ミュージカルのようにカイリー・ミノーグ演じる女性が歌い始める場面が良かった。少し混乱している状態でこうやってわかりやすく歌ってくれると単純にそれを楽しもうとする。救われた気分。これがミュージカルの良さなのかもしれない。
「ゴジラ」だったり「ウエスト・サイド・ストーリー」だったり、過去の映画を連想させるシーンがあって、監督の映画への想いは十分伝わってくる。ただ、疲れ果てている物憂げな主人公といい、どこかネガティブな雰囲気が漂っていることが気になる。もしかしたら、監督は映画の未来に明るいものを感じていないということなのかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/出演 レオス・カラックス
出演 ドニ・ラヴァン/エディット・スコブ/エヴァ・メンデス/カイリー・ミノーグ/ミシェル・ピコリ
撮影 カロリーヌ・シャンプティエ/イヴ・カペ