★★★☆☆
あらすじ
ニューヨークに凶悪犯の身柄を引き取りに訪れたアリゾナの保安官は、護送中に犯人を逃がしてしまう。
感想
後半は逃亡犯を追うハードなサスペンスアクションとなっているが、前半は田舎者のカウボーイが大都会ニューヨークにやって来たというギャップを楽しむ映画といった趣になっている。
田舎者だと侮られ、タクシーやホテルでぼったくられるクリントー・イーストウッド演じる主人公。カウボーイ姿の男を見ると必ず「テキサス出身か?」と聞いてしまうニューヨーカーと「いや、アリゾナだ」と毎回律義に返す主人公。小ネタが効いている。主人公は怒っても良さそうなものだが、ボヤきながらも都会のルールを受け入れているのが可愛らしい。
主人公は田舎者だと侮られるだけではなく、都会人とは違う南部男の気概も見せている。スマートさを重視して衝突を避けようとする都会人に対して、四の五の言わずに拳をガツンと一発お見舞いしたり、気に入った女性がいれば強引に迫っていく。女性を簡単に口説けてしまうのはイーストウッドだからだろう、と思ってしまうが。
規則に則った面倒な手続きをすっ飛ばして、強引に犯人の身柄を引き取ったにもかかわらず、犯人の仲間たちに襲われ逃げられてしまった主人公。名誉挽回のために、逃亡した犯人を捜し始める。難航するのかと思いきや、犯人と一緒にいた女を見つけて彼女に案内させるという簡単なもの。拍子抜けしてしまった。
この辺りは50年以上前の作品なのだという事を実感させられる。昔はこれで満足できていたが、今はもっとたくさんの仕掛けを用意しないと、客が退屈に感じてしまう。
クライマックスのオートバイでのチェイスシーンはまあまあの迫力だったが、バイクで体当たりして犯人のバイクを止めるシーンは、まるで事故みたいな映像でドキドキしてしまった。まるでジャッキー・チェンのアクションを彷彿とさせるような無茶っぷり。これも昔ならでは、といえるかもしれない。
ラストは無事犯人を確保し、男っぽさあふれる南部男が都会のスマートさも身に着けた姿を見せてのエンディング、という上手い締めくくり方。そして駆け付けた全身真っ赤の衣装という異常に派手なヒロインとも軽く言葉を交わすだけ、というのは、男の美学を感じさせられる。よく考えれば、主人公は無駄に女性と関係を持つシーンが多かったのに、ヒロインとだけはそういう関係にならなかった、というのも面白い演出だった。
スタッフ/キャスト
監督/製作 ドン・シーゲル
出演
リー・J・コッブ/スーザン・クラーク/ドン・ストラウド/ベティ・フィールド/シーモア・カッセル