★★☆☆☆
あらすじ
富豪の家に盗みに入った泥棒は、大統領の不倫と殺人を目撃してしまう。原題は「Absolute Power」。121分。
感想
盗みのために豪邸に忍び込んだ主人公が、予期せず戻って来た男女に慌てて隠れたら、不本意ながらノゾキをする羽目になってしまう展開は面白かった。男らしさが売りのクリント・イーストウッドがノゾキをしている画はなんだか笑える。
しかしそれが殺人事件へと発展し、主人公はその目撃者となってしまう。しかもその犯人が大統領なのだから運が悪すぎる。さらには証拠隠滅を図ろうとしていた一味に自身の存在までバレてしまい、命を狙われることになる。
主人公は、自分や娘の命を狙う大統領一味の攻撃をかわしつつ、反撃していく。このプロット自体は悪くないのだが、非常にもっさりとしてテンポが悪いのが辛かった。2時間以上あるわりには中身が薄く、丁寧に描いているというよりはただダラダラと間延びしているだけの印象だ。
それから主人公の見せ場が少ないのも、退屈さを感じさせる原因の一つとなっている。だがよく考えてみると、今回の最大の被害者は不倫され妻を殺されてしまった富豪の男であって、主人公は濡れ衣を着させられそうになりはしたものの、そこに居合わせただけの男でしかない。だから被害者を差し置いて主人公が大暴れをするのは変かもしれないが、それでもクライマックスは何かカタルシスを得られるような主人公の派手な活躍が欲しかった。
立派な人物だと形容されていた富豪の男が復讐のために犯人を殺そうとしたり、逃亡するつもりでいた主人公が卑劣な大統領に怒って気が変わり、制裁を加えようとしたりと、クリント・イーストウッドらしいマッチョな思想が垣間見える作品にはなっている。
だが、アクションや恋愛をやるには少し無理のある年齢になったクリント・イーストウッドが、どうするべきか悩んでいたのかな?と勘ぐりたくなるような、中途半端な仕上がりの映画になってしまっている。
スタッフ/キャスト
監督/製作/出演
原作 目撃〈上〉 (徳間文庫)
出演
エド・ハリス/ローラ・リニー/スコット・グレン/デニス・ヘイスバート/ジュディ・デイヴィス/E・G・マーシャル/メロラ・ハーディン
音楽 レニー・ニーハウス
撮影 ジャック・N・グリーン