★★★☆☆
あらすじ
連続女性殺人事件の犯人を追う刑事。
原題は「Tightrope」。115分。
感想
今回クリント・イーストウッドが演じるのは、離婚して娘二人と暮らす子煩悩な刑事だ。娘たちとの微笑ましいやりとりもあって、珍しく家庭的な面を見せている。ちなみに長女役は、実の娘のアリソン・イーストウッド。可愛らしく、少しませた少女を上手く演じていた。
主人公は刑事として、立て続けに起きる婦女暴行殺人事件の犯人を追っている。被害者は夜の商売の女性たちということで、夜の店を訪れ、同業者たちに聞き込みを行うのだが、そこでついでにしっかりとサービスを受けていくのが面白かった。子どもを登場させてファミリー向けぽい雰囲気を漂わせていたくせに、誘われたら断らずに受けて立つ、いつものタフガイぶりを見せつけている。しかも毎回タイプの違うお店でサービスを受けていくものだから、夜のお店紹介みたいにもなっている。
セリフは少なく、音楽や表情で登場人物たちの心理状態を表現していくオールドスタイルなサスペンス劇で、今見るとじっくり描き過ぎてテンポが悪く、かったるく見えてしまうのは否めない。
それにあまり犯人に迫っていく緊張感もなく、どこかのんびりとした印象を受けてしまう。当時は珍しかったであろう鑑識が活躍する科学捜査や、サイコパスな犯人像というものを描きたかったのかなという気もするが、どちらにしてもなんだか中途半端だった。
唯一、主人公が犯人に自分の姿を重ねてしまう描写が興味深かったが、それなら冒頭に犯人の顔は見せずにおいて、もしかしたら主人公が犯人なのか?と推理を楽しませる演出にして欲しかった。もしくは犯人に濡れ衣を着させられようとして主人公が焦る、という方向にしても良かったのかもしれない。
ラストの犯人追走劇も、じっくり丁寧に描き過ぎでもっさりしてしまっていたが、最期の決着がつくシーンはなかなか面白いアイデアを用いて描かれている。残酷描写ではあったが悪くなかった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 リチャード・タッグル
製作/出演
出演 ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド/ダン・ヘダヤ/アリソン・イーストウッド
音楽 レニー・ニーハウス