★★★★☆
あらすじ
人気経済エンタメ番組の生放送中に、番組のせいで大損をしたという男が乗り込んでくる。
感想
冒頭はテレビ番組の生放送開始前のスタジオの様子が描かれる。皆が色々と段取りを確認したりしている中、余裕しゃくしゃくの様子で軽口を叩きまくるジョージ・クルーニー演じる主役の人気司会者。この様子を見ているだけで、彼のキャラクターが伝わってきて上手い演出だ。そしてこの番組が、かしこまった経済番組ではなく、お金大好き、みたいな低俗さを前面に押し出していて面白い。実際のところ、みんな大体そんな感じのはずだ。
そんな番組の生放送中に乱入してきた男。司会者の言葉を信じて株を買って大損をしたと怒り、銃で脅して説明を求める。ただ損をして腹が立つのは分かるのだが、正直この犯人に同情する気にはなれない。株なんてそんなもので、上がる時もあれば下がる時もある。それで怒って、ましてや人のせいにするのは違うだろう。
とはいいながら一方で、そんな株の世界で有能な経済人を気取って色々な予測をし、当たれば得意顔で言いふらし、外れるとだんまりを決め込む人々に腹立たしさを感じるのも分からないでもない。予測が外れたことを責めると、あくまでも予想ですから、投資は自己責任ですから、と逃げる。さらに今回のように脅迫されたらあっさりと、損をした分は弁償させてもらいます、なんて言ってしまうあたりに、彼らのご都合主義が見え隠れする。
最初は犯人に怯えていた主人公だが、途中から犯人に同情を見せるようになる。主人公のキャラクターは自信家で、あまり他人のことを顧みないような性格だと思っていたので、どうしてそうなったのかが良く分からなかった。単純に犯人の境遇を気の毒と思ったのか、怪しい操作をして大勢を騙し、片手間に大儲けをしている人たちに対して自身も義憤を感じていたのか。どちらの描写もなかったような気がするが。
そして生中継される緊迫の状況を見守る世界中の人たち。そのほとんどが心配して固唾を飲んでいるというわけではなく、単純に面白がっているというのが恐ろしい。でも実際にそんな事件が起きたらきっとそうなるような気がするので、リアルではある。
途中でそんな世界中の視聴者たちに協力を呼びかけるも失敗に終わるシーンがあるのだが、これは現実世界でやったら成功するような気がする。面白がる一環として参加する人や、善意を見せることで気持ちよくなりたいキラキラした人たちが協力するはずだ。なのでこちらにはリアリティを感じなかった。
最後は犯人を大損させた企業のCEOと対峙する。しかし銃で脅して相手に何かを言わせたところで、そんなに納得はできないと思うのだがどうだろう。だが事件を起こした以上はこうなる結末しかないような気もするので納得ではある。
その途中で出てくる、儲けさせているときは喜んでいたくせに、ちょっと損をさせたら袋叩きにしやがって、というCEOの言葉は、これはこれで社会に対する皮肉である。結局は、皆がそのシステムの中でおかしくなっているという事だ。
一つの事件を描きながら、世の中の問題を浮かび上がらせていく社会派の映画。ただもうちょっとサスペンスとして事件を面白く描くことは出来なかったのかと不満を感じない事もない。
スタッフ/キャスト
監督 ジョディ・フォスター
製作 ダニエル・ダビッキ/ララ・アラメディン/グラント・ヘスロヴ
製作/出演
出演
ジャック・オコンネル/ドミニク・ウェスト/カトリーナ・バルフ/ジャンカルロ・エスポジート/クリス・バウアー/デニス・ボウトシカリス/エミリー・ミード/アーロン・ヨー
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