BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「怒り」 2016

怒り

★★★★☆

 

あらすじ

 身元不明で、未解決の夫婦惨殺事件の容疑者かもしれない男たちと、彼らに関わる人々。142分。

www.youtube.com

 

感想

 殺人事件の犯人かもしれない素性のあやしい男たちと、その周辺の人物たちを描いた物語だ。最初に惨殺事件が描かれた後、無関係と思えるような話がいくつも続くが、しばらくするとそのつながりが見えてくる。

 

 殺人事件の解決にただ焦点を当てるのではなく、この事件によって浮かび上がって来た人たちの物語を描く構造になっているのが面白い。しかし世の中には様々な事情から身元を隠して生きるしかない人がたくさんいるのだなと社会の闇を感じてしまった。

 

 

 そんな彼らも生きるためには社会と関わらざるを得ない。彼らに後ろ暗いところがあると知りながら、それでも受けいれてくれる人たちがいる。だがその人たちもどこか社会に対して疎外感を感じているのが興味深い。家族の問題や性的マイノリティ、新たな場所にやって来たよそ者感など、社会の中で孤独感を味わいながら暮らしている。そんな彼らがゆるやかに連帯する姿には胸を打たれるものがある。

 

 逃亡犯の指名手配写真が大々的に公開されたことにより、関係者は疑念を覚え動揺する。そしてそれまで自分でも気づかなかったような各自の内面が炙り出されていく。そこには「怒り」もあった。やがて真犯人が明らかになるが、彼は世の中に渦巻くそんな怒りを代弁しているかのようだった。

 

 ただ、真犯人が明らかになるあたりから展開が急に凡庸で予定調和的になり、トーンダウンしてしまった印象がある。話をしめるためにはある程度仕方がなかったのかもしれないが、彼らは全員無関係で、真犯人は全く別の人だった、という展開でも良かったような気がする。

 

 途中までは文句なしに面白かったので終盤の尻すぼみが残念だったが、豪華出演陣で魅せる映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 李相日

 

原作 怒り (上) (中公文庫)

 

出演

bookcites.hatenadiary.com

森山未來/綾野剛/広瀬すず/佐久本宝/ピエール瀧/三浦貴大/高畑充希/原日出子/池脇千鶴/赤江珠緒

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com

 

音楽 坂本龍一/池内ヨシカツ

 

怒り

怒り

  • 渡辺謙
Amazon

怒り (小説) - Wikipedia

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com