★★★★☆
あらすじ
ハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性暴力疑惑を取材し、さまざまな妨害にあいながらも記事公開を目指す記者たち。
事実を元にした作品。135分。
感想
映画界の大物だったハーヴェイ・ワインスタインの性暴力疑惑に対する取材の様子を、二人の女性記者を中心に描く。こういう話は怒りだとか悲しみだとかエモーショナルに描かれがちだが、記者たちは淡々と取材し、被害者たちも冷静に話そうと努めている。それだけに時折垣間見える彼女たちの感情に心を打たれる。
被害者たちが語るワインスタインの横暴ぶりは酷い。きっと最初はわずかに一線を越えただけだったのが、周囲の反応を見ながらエスカレートしていったのだろう、最終的にはとんでもないモンスターのようになってしまった。
不正や腐敗などと一緒でこれは最初が肝心で、そこで止めなければとめどなくエスカレートしていく。だからといって受け流してしまった女性たちを責めることは出来ないが。密室で行われるだけに公にはなりにくく、それだけに卑劣だ。
彼が取材のターゲットになっていると知ってから行った様々な妨害工作も酷かった。自身の影響力を最大限に活用して取材に応じる女性達に圧力をかけ、他のマスコミを使ってネガキャンをしたり、新聞社にも脅しをかける。そして子供のように他人をののしり、言い訳をくり返すなりふり構わない姿は醜悪だった。
日本のアイドル事務所で起きた事件は、メディアがこういう圧力にあっさりと降参してしまったために放置され続けた。加害者だけでなく、加害者を守るためのシステムが出来上がり、多くの人が加担してしまってることも問題だろう。それへの被害者の対抗手段が、あまりに脆弱であることも浮かび上がらせている。
性暴力の問題と共に、地道に取材を進めて着実に真実を明らかにしていくジャーナリズムの力が感じられるストーリーだ。権力に物怖じせず、冷静に振る舞いながら仕事を遂行するチームのプロフェッショナルぶりには感銘を受けた。
しかもメインの二人の女性記者は、普通に結婚・出産し、子育てしながら最前線で仕事をしている。これがアメリカでは普通、ではないにしても特殊というほどでもないのは確かだろう。ジャーナリズムといい、働き方といい、日本とアメリカのレベルの差に呆然としてしまう。しかもその差は縮まるのではなく、広がる一方なのだから悲しい。日本の真実は、海外のメディアによって伝えられるようになりつつある。
スタッフ/キャスト
監督 マリア・シュラーダー
原作 その名を暴け #MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い (新潮文庫)
製作総指揮
リラ・ヤコブ/ミーガン・エリソン/スー・ネイグル
出演 キャリー・マリガン/ゾーイ・カザン/パトリシア・クラークソン/アンドレ・ブラウアー/サマンサ・モートン/ジェニファー・イーリー/アシュレイ・ジャッド
SHE SAID/シー・セッド その名を暴け - Wikipedia
登場する作品
ハーヴェイ・ワインスタイン/アシュレイ・ジャッド