★★★★☆
あらすじ
捜査が難航する連続殺人事件に興味を持ち、一人で調査を始めた新聞の風刺漫画家。
60年代後半に実際に起きた未解決事件「ゾディアック事件」を基にした映画。158分。
感想
冒頭の、独立記念日のお祭りムードあふれる夜に突然起きる殺人事件はショッキングだった。この映画の殺人シーンはどれも鮮烈だ。
主人公は、メディアに手紙を送り付けて事件を予告するなど、いわゆる劇場型犯罪を行なう犯人に強い関心を示す。この主人公が刑事でも記者でもなく、風刺漫画家だというのが興味深い。暗号を送りつけたり警察を挑発したりする犯人は、ある意味で漫画的だ。だから主人公の心の琴線に触れたのかもしれない。
新聞社に勤めるも蚊帳の外であまり情報が回ってこない主人公は、同僚記者と仲良くなり、共に事件について語り合うようになる。このロバート・ダウニー・Jr演じる記者と主人公が良いコンビネーションを見せていて微笑ましかった。変人と変人のコンビだ。
ただ捜査が難航し、事件が長期化の様相を見せ始めると、人々の関心は薄れ、捜査に関わっていた人たちも様々な事情で事件から距離を取るようになる。時間の経過とともに解決の可能性が薄れていく中で、モチベーションを保って調査を続けるのは確かにタフなことだ。その後も次から次と別の新たな事件が起こり続けるし、自身の人生の状況も変わっていく。主人公と記者のコンビも解消してしまったのは残念だった。
それでもただひとり、情熱を失わなかった主人公。コンタクトを取った警察関係者たちが次第に彼に情報を流し、いつの間にか捜査の指導のようなことまでするようになっていったのは面白かった。担当や規則など様々な足かせで自由に動けない彼らの思いが託されているかのようだった。だが同時に、彼ら警察が担当地域ごとに捜査し、その情報を全体でうまく共有できなかったことが、事件の迷宮化を招いたことを窺わせてもいる。
登場人物も多く、各地で事件が起きるので、人名や地名を把握するのに苦労した。だが、主演のジェイク・ジレンホールはじめ役者陣が皆良い演技を見せていて、時間を忘れて楽しむことができた。特に刑事役のマーク・ラファロの抑制の効いた演技は印象に残る。
結局犯人が曖昧なまま終わってしまうラストには物足りなさが残るが、実話だから仕方が無い。ただ未だに解決していない事件を題材にした映画としては、悪くない終わり方だった。
スタッフ/キャスト
監督 デヴィッド・フィンチャー
脚本/製作 ジェームズ・ヴァンダービルト
出演 ジェイク・ジレンホール/マーク・ラファロ/ロバート・ダウニー・Jr/アンソニー・エドワーズ/ブライアン・コックス/ジョン・キャロル・リンチ/クロエ・セヴィニー/イライアス・コティーズ/ドナル・ローグ/ダーモット・マローニー/フィリップ・ベイカー・ホール/クレア・デュヴァル/リー・ノリス/ジミ・シンプソン/チャールズ・フライシャー
音楽 デヴィッド・シャイア
撮影 ハリス・サヴィデス
編集 アンガス・ウォール
登場する作品
登場する人物
ロバート・グレイスミス