★★★☆☆
あらすじ
恋人を殺した組織を追ううちに、ボリビアのクーデターを企むNPO法人にたどり着いたジェームズ・ボンド。
シリーズ22作目。ダニエル・クレイグ版の2作目。106分。
感想
前作の続きで、謎の組織の全貌を探る主人公ジェームズ・ボンドの姿が描かれる。所属するMI6にいまいち信用されていない主人公が、尋問して情報を聞き出したい敵の重要人物たちを不慮とはいえ、次々と殺してしまうのには思わず苦笑してしまった。あーあ、これでまた疑われちゃうよとこちらまで頭を抱えてしまう。ダニエル・クレイグ版のジェームズ・ボンド像は、常に苦境に立たされながらも必ずそれを乗り越えていくタフな男、といったところだろうか。苦労が絶えなさそうだ。
今回の敵は、表向きは環境保護団体を装いつつ、その裏ではボリビアの軍事クーデターを目論むの男だ。だが前作同様、彼もまたあまり強大な敵という感じはしない。しかも、ほとんど主人公の存在を気にしていないし、たいして警戒もしていないので、両者がぶつかりあう真剣勝負の醍醐味もない。二人の対決に気分が盛り上がる要素がさしてなかった。
ただ、相手に気付かれずに近づき、秘密の情報を手に入れるのがスパイ本来の役割なので、これこそがリアルな姿だと言えるのかもしれない。敵に姿を見せるのは最後の手段だ。このシリーズはシリアス路線で、外務大臣が「昨今取り引きできる相手は悪人だけ」と語っていたのが印象的だった。確かに今、確実に正義だと言える相手なんていないのかもしれない。これは国でも同じで、アメリカもロシアも中国も、そして日本だって一概に善だとは言えないだろう。それは彼らイギリスだって例外ではない。
まだ続きがあるような結末で、なんとなくドラマシリーズの一話分を見終えた時のような感覚が残った。それでも泥臭いアクションやストーリー展開は、前作よりもこちらの方が好みだ。ダニエル・クレイグ版の世界観にようやく慣れただけなのかもしれないが。上映時間二時間越えが当然のようになっているこのシリーズで、なぜか今作だけ106分しかない潔さも好印象だ。
スタッフ/キャスト
監督 マーク・フォースター
脚本 ジョシュア・ゼトゥマー/ポール・ハギス/ニール・パーヴィス/ロバート・ウェイド
出演 ダニエル・クレイグ/オルガ・キュリレンコ/マチュー・アマルリック/ジャンカルロ・ジャンニーニ/ジェマ・アータートン/アナトール・トーブマン/イェスパー・クリステンセン/デヴィッド・ハーバー/ロリー・キニア/ティム・ピゴット=スミス/ホアキン・コシオ/ジェフリー・ライト/ジュディ・デンチ/ポール・リッター/スタナ・カティック/ウーナ・チャップリン
音楽 デヴィッド・アーノルド
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