★★★☆☆
内容
フランスの英雄、ジャンヌ・ダルクの生涯を描いた伝記映画。
感想
史実をもとにしているから最後は悲しい結末になるにしても、それまでは痛快な彼女の活躍が見られるのかと思ったが、そうでもなかった。神様の使いという立ち位置なので自分の意志ではなく、神様がやれと言っているからやらなければならないという態度。だから彼女自身が中間管理職的にもどかしさや焦りを感じていて、少々気の毒に感じてしまう。
周りにいる人間にとっても、指揮官に「神がやれと言っているからお前らやれ」と命令されたら、ずいぶん無責任な指揮官だな、と思うはず。たとえ失敗したとしても、神の意志を伝えただけで自分は悪くない、なんなら神を信じきれなかったお前らが悪いと言われてしまいそうでもある。
しかも、勝ったら勝ったで大量の犠牲者を目の当たりにして、こんなことは望んでいなかったとかオロオロされたら士気が下がってしまう。面倒くさい。
そもそもなんで女性であるジャンヌ・ダルクが軍隊を率いることになったのかが、それまでよく分かっていなかったのだが、そういう無茶苦茶な策を採用したくなるほど当時は行き詰まっていた、ということはよく分かった。いきなり現れた女性の指揮官に男たちがよく従ったなとも思うが、案外戦争は異性がいたほうが士気が上がるということだけなのかもしれないな、とも思った。
なにはともあれ国のために貢献したジャンヌ・ダルクに対して、最後はひどい仕打ちをしたという認識だったのだが、そういう単純な話でなかったというのもこの映画を見ることで知ることが出来た。フランスが一枚岩ではなく派閥に分かれており、彼らの思惑の中で彼女は悲しい最後を遂げることになった。国王が自らのために戦った彼女を、用済みとして助けようとしなかったというのはあるのだが。
ジャンヌ・ダルクが捕まってからは、宗教の悪い部分を見させられているような嫌な気分になる。ジャンヌ・ダルクの神の使い気取りに少々鬱陶しさを感じていたのだが、今度は彼女を異端にしてしまおうとする宗教者たちの手前勝手な醜さが浮かび上がってくる。処刑の大義名分を手に入れるためのまどろっこしい手続き。
そして彼女自身も信仰が揺らぎ始める。正直、どちらにしても処刑されるのだから、もうそのままにしておいてやれよと可哀想になってしまった。もういまさら余計なダメージを与えるなよと。このあたりからラストまでは、見ていてかなりしんどかった。
異端とされ処刑された彼女も後に名誉は回復された、と紹介されるのだが、じゃあ間違った判断をして彼女を殺してしまった当時の宗教界の偉い人たちには、何らかのペナルティが課されたりしたのだろうか。殺された後に何をされてもあまり意味ないよな、とモヤモヤしたものが残る。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作総指揮 リュック・ベッソン
脚本/製作総指揮 アンドリュー・バーキン
出演 ミラ・ジョボヴィッチ/ジョン・マルコヴィッチ/フェイ・ダナウェイ/ヴァンサン・カッセル/チェッキー・カリョ/パスカル・グレゴリー/デズモンド・ハリントン/ティモシー・ウェスト
音楽 エリック・セラ
登場する人物
ジャンヌ・ダルク/シャルル7世/ヨランド・ダラゴン/ジル・ド・レ/デュノワ伯/アランソン公/ラ・イル/ピエール・コーション