★★☆☆☆
あらすじ
25年の刑期を終えて出所し、まともに生きようとしていた男だったが、かつての相棒の息子に仕事を手伝うよう脅される。
原題は「The Samaritan」。93分。
感想
出所してまともに生きようとしていた男が、しがらみによって元の世界に引き戻されてしまう物語だ。最初は死んだ相棒の息子のあの手この手を使った執拗な勧誘を頑なに拒絶していた主人公だったが、とある女性と付き合い始めたことによって弱みを握られてしまう。
だがその女性は、自分を厳格に律していた主人公が選ぶような女性には思えなかったので腑に落ちなかった。恋愛なんてそんなものだと言ってしまえばそうかもしれないが、それならそれまでの主人公の超然とした態度はなんだったのだ?と思ってしまう。しかも状況的に何か裏がありそうな女で、結局、案の定の結果となってしまった。
さらに中盤でその女性に関する驚くべき事実も明らかとなり、とてつもなく重苦しい展開となる。だがそのことについて突き詰めるでもなく、他に何かあるわけでもなく、何が描きたいのか分からないまま、ダラダラと時間だけが過ぎていく。上映時間93分と短い映画だが、体感的にはとてつもなく長く感じる。
クライマックスは、予定が狂うも強行された詐欺のシーンだ。順調だったのに、ある事がきっかけで悲劇となっていく。しかし冷静に振り返れば、女が余計なことをしなければ何事もなく無事に仕事を終えていたはずなので、どう考えても完全に彼女が悪い。彼女がやりたかったことは、すべてが終わった後に改めてやればよかったことで、なぜ大事な佳境であんな行動に出たのか、意味が全く分からなかった。だからその後の美談のように描かれる一連のシーンを見ても、何も心に響かない。
詐欺師ものとしての面白さはゼロだったが、これは邦題に問題がある。原題は「The Samaritan(サマタリア人)」だ。爽快なクライムサスペンスではなく、ヒューマンドラマをやりたかったのだろう。だが何もかもが中途半端だ。女性が真実を知った時の様子を知りたかったが描かれなかったし、彼女がそれをあっさりと乗り越えたらしいことも信じられない。
上手く演出することが出来れば重厚感のある良作となったかもしれないが、無駄に重苦しいだけの救いのない作品となってしまっている。
スタッフ/キャスト
監督 デビッド・ウィーバー
製作総指揮/出演
出演 ルーク・カービー/ルース・ネッガ/トム・ウィルキンソン