★★☆☆☆
あらすじ
前作で巨人化した主人公は、指揮官に拘束され処刑されそうになるが、突如現れた巨人に救われる。2部作の後篇。87分。
感想
前作のラストで主人公が突如巨人化し、後篇ではどんな驚きの展開が待ち受けているのかと心を躍らせながら見始めた。だが、いきなり身内のつるし上げがあり、その後はどちらにつくのかの内輪もめと、巨人とは全く関係のない、ちまちまとした組織のいざこざが延々と続く。
特に中盤の内輪もめは、なぜいつまでもグダグダとやっているのかがよく分からなかった。一緒にやるならやる、やらないなら袂を分かって去る、もうどっちでもいいからさっさと決めて終わらせてくれよと辟易としてしまった。こんなことで死んでいった人間たちが不憫だ。
この内輪もめの決着をつける際にようやく巨人が出てくるが、相変わらず映像に迫力がない。巨人にも巨人感が乏しい。この巨人たちよりも、終盤に壁の上で主人公らを煽る國村準演じる指揮官の方が巨人感があったのは笑った。このシーンが映画の中で一番ダイナミックだった。
ただこれは、彼が超大型巨人化することを示唆する伏線だったのかもしれない。そしてそこから逆算して、他の巨人たちは敢えてそこまで巨人感を出さなかったのかもと思い至ったが、もしその通りだったとしたら完全に失敗だ。最後に登場する超大型巨人のためにそれまでの巨人の表現を抑えたことで、ずっとショボい印象を与え続けることになってしまった。
それから前篇では全く気にならなかったのに、この後篇では主人公演じる三浦春馬の劇画調の大げさな演技が鬱陶しく感じて仕方なかった。言動が常に全身全霊で、もっと普通に出来ない?と段々イライラしてきた。だが、なんで普通に喋ればいいのに叫んでいるの?とか、必死に戦っているわりにはよく喋るねとか、独り言の声がデカすぎない?とか、ツッコミを入れながら見ていたら最終的にはなんだか楽しくなってきた。
そして石原さとみは前作同様で変わらず、白々としたキャラクターを楽しそうに演じている。しかし彼女もそうだが、この映画の登場人物たちは途中でよく消えた。主人公らが今後のことで揉めている間、そこに彼女もいたはずで、立場的に何らかの意見を表明しないとおかしいのに、いた?と思ってしまうほど空気のような存在になっていた。他のキャラも、いるはずなのに突如存在感が一切なくなる時があった。そしてある時、突如現れる。
ラストは、壮大な物語のほんの導入部分だと思っていた壁の修復作業の話が、実は物語のすべてだったと判明して腰を抜かしそうになってしまった。人類対巨人の壮絶な戦いの物語かと思っていたのに、上司を説得し、仲間をまとめて工事を完成させるお仕事のお話だった。あまりのスケールの小ささに脱力し、しばらく動けなかった。
ただ、これが3時間の映画だったら激怒してはらわたが煮えくり返っているところだが、90分弱しかなかったのでそんなにダメージはない。なんなら酷すぎて逆に面白く感じてしまうほどだ。色々ツッコミを入れながらみんなで見たら楽しいかもしれない。上映時間の短さはやはり正義だ。愛されるB級映画はどれも上映時間が短い。
スタッフ/キャスト
監督 樋口真嗣
脚本 渡辺雄介/町山智浩
出演 三浦春馬/長谷川博己/水原希子/本郷奏多/三浦貴大/桜庭ななみ/松尾諭/石原さとみ/ピエール瀧/KREVA/草彅剛/緒川たまき/犬童一心
音楽 鷺巣詩郎
編集 石田雄介
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