★★★★☆
あらすじ
戦争で四肢を失って帰国した夫に戸惑う妻。
感想
冒頭からいきなりインパクトのある出だし。戦争では無事帰還か戦死の2択ではなく、当然こういうこともありえる。だけど想像していなかった姿で戻ってきた夫に、妻が冷静さを失うのは勿論理解できる。そりゃ軍神などといってリスペクトされなければ、やってられないだろう。それでも、時間と共にそれにも慣れる。
だが当然、軍神となった夫に尽くす妻という美しい物語で終わるわけはないわけで、彼らの人生は続き、様々な感情が去来する。夫を気の毒に思ったり、腹立たしく思ったり、勲章をくれただけの国に憤りを覚えたり、自分の境遇に憐れみを感じたり。時には醜い感情にどうしようもなくなる時もある。
四肢を失い、意思の疎通もうまく出来ず、ほぼ生きているだけの男。やれることは限られている。男と妻のベッドシーンはなかなかの妖しさが漂っていた。ただ、妻の夫に対する心境が変化していく様が分かるように、もっと執拗に描いても良かったのかなとも思ったが、それだとメインのテーマである反戦がぼやけてしまうという判断なのかもしれない。
戦争から帰還した夫と妻の姿を見せるだけで、戦争がなければと何度も思わせ、戦争がもたらす悲惨さが伝わってくる。終戦とともに映画は終わるが、戦後の何もかもがひっくり返った後の、二人に対する世間の反応がどう変化したかも見たかったような気がする。
スタッフ/キャスト
監督 若松孝二
出演 寺島しのぶ/大西信満/吉澤健/河原さぶ/ARATA/篠原勝之/小倉一郎(声)