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「死の棘」 1990

死の棘

★★★☆☆

 

あらすじ

 自身の浮気をきっかけに心を病んでしまった妻の面倒を見る夫。

 

感想

 浮気をされた妻が延々と主人公である夫をなじり続ける映画だ。誰の立場で見るかによるが、なんだかずっと針のむしろに座っているようで、居たたまれない気持ちになってしまった。浮気をした相手への嫌がらせや、浮気の疑いのある相手の反応を確かめるために一緒に見るには最適な映画かもしれない。地獄を味わすことが出来る。

 

 ただ人間というものは、ずっと責められっぱなしだと反発したくなるもので、この主人公もつい開き直った言葉を吐いてしまうのだが、妻の「あれ?反省しているはずの男が反論しているよ?」みたいな返しが面白く、そして怖かった。こんな状態が続けば自分までもがおかしくなってしまうのは当然で、主人公も時々発狂したように我を失っていた。

 

 

 そして段々と妻に従順になっていく主人公。演じる岸部一徳の感情がなくなってしまったかのような死んだ顔が素晴らしい。終盤の浮気相手との修羅場で荒ぶる妻とそれに従うしかない夫の姿は、まるでヤバい宗教団体の教祖様と洗脳された信者のようだった。だけどそれくらい夫は妻を愛しているという事なのだろう。

 

 静かで陰気な雰囲気がずっと続き、時々不協和音が鳴り響いて落ち着かない気分を増幅させる。ただ淡々としたテンポで続く展開は、誘惑の多い自宅で見ていると気が散りそうになった。映画館だと気が散る要素があまりないので、それが映画館で映画を見る利点と言えそうだ。すぐにチャンネルを変えられてしまうテレビと映画との違いとも言える。

 

 どんな形であれ、この辛い状況にいち早く終止符が打たれることをどこかで望む気持ちもありながら、それでもやっぱり妻の回復を願ってしまう主人公のなんとも言えないラストの表情が印象的だった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 小栗康平

 

原作

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出演 松坂慶子/岸部一徳/木内みどり/平田満/浜村純/白川和子

 

死の棘

死の棘

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死の棘 - Wikipedia

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