★★★☆☆
あらすじ
同乗していた車の事故で親友の夫妻を亡くし、失意で引きこもっていた大富豪が、結婚して戻ってきた親友の娘のために、再び外に出るようになる。原題は「The Benefactor」。
感想
タイトルの「ベネファクター(benefactor)」は、金銭的な後援者や慈善事業家といった意味。ただ、その後の「封印」のせいで、サスペンスやミステリーを連想してしまい、いつ衝撃の事実が明かされるのかと思いながら見てしまった。実際はヒューマンドラマで、そういった意味では何も起こらない。テレビで放送されたときの「リチャード・ギア/人生の特効薬」のほうが、しっくりくるタイトルではある。
だが思わせぶりな表現は多かった。リチャード・ギア演じる主人公が、なぜホテルのスイートルームで暮らすほどの金持ちなのかは最後まで明かされなかったし、親友夫妻を亡くした事故も、何か秘密が隠されているような描き方だった。産まれたときから知ってるはずの親友の娘ともあまり話さず妙な距離感があるし、その娘夫婦の間にもなにか冷たいものを感じた。
そもそも主人公と親友だった亡くなった夫妻との関係もどこか奇妙で、常に二人の間に入り込もうとしていた。これは娘夫婦の間にも入り込もうとしていたので、金はあるが孤独な人間の、寂しさゆえの行動なのかもしれないが。ヒューマンドラマのくせに、ミステリーが多すぎた。
登場人物たちがもう少し人間味のある姿を見せてくれればいいドラマになったと思うのだが、あまりにも冷え冷えとした描写ばかりだった。
それから、ひきこもりの時は長髪で髭面、外に出るようになった時は髪を切って髭面、最後さらに心の内に抱えていた問題を解決するために新たなスタートを切ろうとしたときには髭も剃ってと、心境の変化を外見で表現している。でもそれって長髪や髭面の人に対する偏見になってるような気がしなくもない。髭面や長髪の人は逆に精神的に何か問題を抱えているということか?と。ただの言いがかりだが。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 アンドリュー・レンツィ
出演
ダコタ・ファニング/テオ・ジェームズ/クラーク・ピータース