★★★☆☆
あらすじ
姉と使用人の息子の密会を目撃した少女は動揺し、邸内で起きた事件に嘘の証言をしてしまう。
原題は「Atonement」。123分。
感想
十代の多感な少女が、不意に大人の世界を覗き見してしまったことから始まる物語だ。普通なら大人に嫌悪感を抱いて終わりだが、その日は別の事件がさらに起きてしまったのが不運だった。
動揺していた彼女は、その日の出来事で心に渦巻いていた様々な感情を、そこで無分別にぶつけてしまった。この態度自体も未熟な十代ならではだが、それが姉や使用人の息子、そして自分のその後の人生に大きな影響を与えることになる。
前半はそんな運命の一日がじっくりと描かれる。同じ出来事を別の視点から再度描く演出は面白かったが、話がどこに向かおうとしているのかがよく分からず、推進力には欠ける展開だった。
後半はその数年後、戦争が始まって出征した使用人の息子の様子を中心に描かれる。兵士たちが行く広大な平原の映像は美しく、カオス状態のダンケルクでの長回しのシーンには圧倒された。ただ、これらが本筋のストーリーとどのような関係があるのかは見えない。
そして運命の日以降バラバラになっていた少女、その姉、使用人の息子が再び一堂に会して、終盤へと向かう。ラストで元少女によって真実が明らかにされるが、そこでようやくそれまで描いてきたことの意味が分かった。現実は甘くない。
各シーン、各シークエンスに見応えはあり、ストーリーにも心打たれるものがあるのだが、登場人物の心情が見えづらく、各場面の意図が伝わりづらいのが少々しんどかった。
スタッフ/キャスト
監督 ジョー・ライト
脚本 クリストファー・ハンプトン
原作 贖罪 (新潮文庫)
出演 ジェームズ・マカヴォイ/キーラ・ナイトレイ/シアーシャ・ローナン/ロモーラ・ガライ/ヴァネッサ・レッドグレイヴ/ブレンダ・ブレッシン/ベネディクト・カンバーバッチ/ジュノー・テンプル/アンソニー・ミンゲラ
撮影 シェイマス・マクガーヴェイ