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「八月の狂詩曲」 1991

八月の狂詩曲

★★★☆☆

 

あらすじ

 ハワイにいる臨終間近の自分の兄だという男に子供たちが代わりに会いに行っている間、長崎で孫たちを預かることになった老女。タイトルの読みは「八月の狂詩曲(ラプソディー)」。

 

感想

 ひと夏の間、孫たちと暮らすことになった老女。子どもたちが自分の兄だというハワイに住む男に会いに行ったからなのだが、自分の兄弟を思い出せないなんてことがあるのかと驚いた。ただ、はるか昔のことだし、10人以上兄弟がいたというから、そんなものなのかもしれない。しかし兄弟が10人以上もいるなんて想像もできない。

 

 そして老女の記憶を蘇らすために、孫たちが協力して様々な昔話を聞き出していく。おとぎ話的な雰囲気も一瞬あったのだが、最終的には長崎の原爆の話が中心となっていく。テーマがテーマなので当たり前だが、中盤は少し真面目というか、堅苦しさがあった。

 

 

 やがて、老女の夫が原爆で亡くなっていた事を知ったリチャード・ギア演じるハワイの甥が来日したことで、親族たちの間に一瞬気まずい空気が流れる。だがアメリカ国籍とはいえ、彼だって日本にルーツがある血縁なのだから、原爆の話をしたところで気を悪くすることなんて普通はあり得ないだろう。日本人は勝手に相手を慮って忖度してしまうところがあるが、相手がどう思っているかなんて実際に話してみなければ分からない。誤解を避けるためにもちゃんと相手の話を聞き、そして自分の気持ちや意見を伝えることが大事だろう。それをしないで、分かってますから、みたいな態度を取るのは、ある意味で傲慢とさえ言えるかもしれない。

 

 その甥ら親族を交えて、老女が地域の皆と原爆忌の供養をする姿は胸に迫るものがあった。人生でたった一回起きただけのことに、生涯を囚われ続けなければいけないというのは辛い。天変地異ならまだ仕方がないと諦めがつくかもしれないが、それが人為的なものだと色んな人を恨めしく思ってしまいそうだ。

 

 色々なものを奪った原爆を、老女は何十年経っても決して忘れることが出来ない。今でも生々しく記憶が残っていることを窺わせるラストシーンは強く印象に残る。普通だったらセリフでたたみ掛けて、お涙頂戴の感動ものにしたくなるシーンなのに、逆にセリフが少なくなって嵐の音だけとなる演出も良かった。彼女の思いがより強調されていた。

 

 それから、老女を演じた村瀬幸子はこの時、80代中盤だったはずだが、ただ雰囲気でその場にいるのではなく、がっつりと迫真の演技を見せていてすごい。素晴らしかった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/編集

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原作 鍋の中

 

製作    黒澤久雄

 

出演 村瀬幸子/大寶智子/鈴木美恵/伊崎充則/井川比佐志/根岸季衣/河原崎長一郎

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八月の狂詩曲

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