★★★☆☆
あらすじ
手術により半身に後遺症が残ってしまった妻の介護をする夫。
アカデミー賞外国語映画賞。カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作。
感想
歳を重ねても仲睦まじい夫婦。だがそんな夫婦もいつまでも一緒にいられるわけではない。二人仲良く食事をしていた時に、妻が異変をきたすシーンは恐怖だった。いつかは死が二人を分かつという現実を突きつけられる。
弟子の若い音楽家たちがわざわざ挨拶に訪ねて来るシーンは、夫婦二人がどんな人生を送ってきたのか、そしてどれだけ敬意を払われているかを窺わせる。そしてそれを誇りに思っていた妻は、思うように動けなくなった自分自身を人に見られたくない。そして介護してくれる夫にも、見せたくない姿を見せなくてはならないことに傷ついている。自分の人生は長くて良い人生だった、もう充分、と夫につぶやくシーンは切なかった。
そんな妻を献身的に介護する夫。いわゆる老老介護で大変なはずだが、そんな素振りは一切見せない。夫としては妻が生きていてくれればいい、そう思っているようだ。水を飲むのを拒み、生きようとしない妻につい手が出てしまい、その事に自身でびっくりしている姿が印象的だった。
死んでほしくないと思っているのは何故なのか?彼女と二度と顔を合わせて言葉をかわすことが出来なくなってしまうのが悲しいからか。でも突き詰めるとそれは、自分が悲しいということであって彼女のためではなく、単なるエゴなんじゃないか?そんな思いもよぎる。
静かに物語が展開していく中で、突然衝撃的なことが起きて驚かされる。だがきっと、これは彼女が望んでいたことが遂に叶ったということなのだろう。ラストの二人の姿を見て、きっとこれはハッピーエンドなんだな、と思った。
あまり多くを語らない映画だ。見終わったあとに内容を何度も反芻し、物思いにふけってしまった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ミヒャエル・ハネケ
出演 ジャン=ルイ・トランティニャン/エマニュエル・リヴァ/イザベル・ユペール/アレクサンドル・タロー