★★★★★
あらすじ
規約違反で謹慎処分が下された女殺し屋のコンビは、金欠のためアルバイトを始めるが、彼女らの地位を狙う殺し屋に命を狙われる。
シリーズ第2作。101分。
感想
今作では謹慎処分が下された女殺し屋コンビの日常が中心に描かれていく。ちょっとしたアクションはあるが、殺しをするシーンは終盤までなく、彼女らのゆるい日常生活が中心だ。二作目だからこその余裕が感じられる。
前作から引き続き、殺し屋のイメージとは全く異なる二人の生活ぶりが面白い。エージェントに不満をこぼし、他部署の人間には恐縮し、保険料が高いとボヤいたり、規約に抵触しないか確認したりしている。普通の社会人と何も変わらない。
さらに、二人が謹慎中のため本業の仕事が出来ず、普通のアルバイトを始めたものだからますます生活臭が漂う。安いソーセージを買ったら全然味が違ったとか、豆苗は再生するので無限に食べられるとか、貧しくなりつつある日本の世相をリアルに映し出しているかのようだ。
また、定食屋の価格に関する話は、値上げが続く今見ると、とても昔の話のように感じてしまった。去年の映画なのに話とは裏腹にどれも安く見える。
そんな今の日本の現状をコミカルに描いていくのだが、バイト先のお年寄りから始まる「花束みたいな恋をした」の謎の激推しには思わず笑ってしまった。わざわざ映画の音声まで使って長々と引っ張る。いいのか?と思ってしまったが、大好きなものを無邪気にアピールする姿には好感が持てた。
それに、老人が若者みたいな話をする面白さを狙っていたのかもしれないが、年齢関係なく好きなものを好きと言っているのもいい。
ゆるゆると展開してきた物語は、主人公らを狙う殺し屋二人組との対決でクライマックスを迎える。そのきっかけとなる掃除屋の女性の言葉は熱かった。こんな世の中を生きる術として飄々とした態度を取ってはいるが、奴隷根性に染まってしまったわけではないとその気概が顔を出す。
この気概はきっと誰もが持っているのだろうが、それを見せることはほとんどない。こういう世の中だから仕方がないよねと物分かりの良いポーズを取り、時には他人を冷笑しながら、自分は弱者じゃない、全然つらくない、と言い聞かせている。
皆が素直に気持ちを吐露できれば、この映画のようにガラッと変えることができるはずだが、タイミングを間違えると叩かれてしまうので、皆が必死に周囲の顔色を窺ってばかりいるから難しい。ある意味で互いをけん制し合うシステムになっていて、彼らを苦しめる誰かにとってはまことに都合がいい状況だ。
クライマックスのアクションは、それまでのゆるいテイストを残しなが行なわれるのがいい。決闘の途中で挿入されるパントマイムのようなシーンは、変な方向に物語が進むのかと一瞬不安にさせるエアポケットのような間となって、いいアクセントになっていた。そこからたたみかけるような決着で、最後はしっかりと引き締める。
アクションだけを見れば前作の方がすごかったかもしれないが、現代日本に対する批評性の高さと、それをエンタメに昇華していることに感心してしまう映画だった。メインとなる殺し屋同士の対決も、正規対非正規社員の問題であり、同一労働同一賃金の問題を想起させる。だからこそのあのラストだったのだろう。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 阪元裕吾
出演 髙石あかり/伊澤彩織/丞威/濱田龍臣/水石亜飛夢/橋野純平/飛永翼/中井友望/安倍乙/渡辺哲
音楽 SUPA LOVE
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