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「愛を乞うひと」 1998

愛を乞うひと

★★★☆☆

 

あらすじ

 母親に虐待されて育った女は、幼い頃に死んだ台湾出身の父親の遺骨を探し始める。

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 原田美枝子、中井貴一、國村隼ら出演。135分。

 

感想

 若くして死んだ、優しかった父親の遺骨を探す女が主人公だ。遺骨を探す現在と、母親に引き取られて暮らした幼い頃の回想が交互に描かれる。

 

 まずは何と言っても、母親から虐待を受ける幼少期の描写が強烈だ。タバコの火を押し付けられ、階段から突き落とされ、嘔吐するまで殴られる。義理の父や近所の人が見て見ぬふりをしているのもしんどくて、居たたまれない気持ちになる。ただ、家族に暴力を振るう父親の話はわりとよくあるので、それの母親版があってもおかしくないなと、それほど衝撃はない。

 

 

 昭和の漫画に登場するおじさんは、突然激昂するカミナリ親父的なキャラが多くて、あれは戦争のPTSDだったのでは?という指摘があるらしいが、きっと主人公の母親も、戦争期のトラウマが何かしら影響しているのだろう。しかし、常に娘を虐待するのは、あまりにも単純化されていてリアリティに欠ける。優しい時もあり、虐待する時もあるのが普通だろう。娘を褒めたのは一度だけ、というのも極端すぎる。

心を壊した「熱血軍曹」の父 死後に知った戦争トラウマ、遺族の悔い #戦争の記憶 - 未来に残す 戦争の記憶 - Yahoo! JAPAN

 

 現在の主人公は、娘と共に、遺骨を探して父親の出身地である台湾に向かう。そして、父親の親族たちと面会するのだが、主人公らが戦争中の現地での日本人の加害行為に無自覚なのがとても気になる。彼女の父親の世代はもろに何らかの影響を受けているはずなのに、気まずいナイーブな話題という意識はないらしく、配慮する様子は見られない。「台湾は、日本語を喋れる人が多くてラッキー」みたいな娘の軽いノリにも引いてしまう。

 

 主人公が自身を、父親の血を引く台湾側の人間として捉えている可能性もあるが、幼少期から彼女が出自を意識していた様子はない。逆に、その点で思い悩むことはなかったのかと気になってしまう。

 

 壮絶な過去を持つ主人公が、過去を訪ねることで自分の人生にけじめをつける物語だ。ただ、しっかりと娘を育て、ちゃんと生きてきた主人公は、すでにある程度の心の整理が出来ていたように見受けられる。「愛されたかった」と語る彼女の心情も、それは「依存」に過ぎず、幼すぎて母親に頼るしかなかったのだから仕方がないだろうと思ってしまう。それでも愛されたかった、ということなのだろうが。

 

 当時はかなり評価された映画だが、その後に作られた家族内の問題を描く作品をたくさん見たからか、どれも至極当然の展開に思えて、心を揺さぶられるようなことはなかった。映画公開当時、主人公と同じくらいの世代だった人たちは、同じ時代を生きてきたという意識があって、いろいろと思うところがあったのかもしれない。

 

スタッフ/キャスト

監督 平山秀幸

 

脚本 鄭義信

 

原作 愛を乞うひと (角川文庫)

 

出演 原田美枝子/野波麻帆/小日向文世/熊谷真実/モロ師岡/うじきつよし/大沢あかね/温水洋一/西田尚美/マギー司郎/中村有志/佐藤正宏

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愛を乞うひと

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  • 原田美枝子
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愛を乞うひと - Wikipedia

 

 

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