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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「インテリア」 1978

インテリア

★★★☆☆

 

あらすじ

 完璧を求める妻に嫌気がさした夫が別居を申し出て、動揺する妻と三人の娘たち。 

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感想

 自分が最善だと思う事を家族に押し付けて生きてきた女性。その象徴が、彼女の見立てで完璧に調えられたインテリアだろう。しかし、完全なる善意からやっている事なのでたちが悪い。文句が言いづらい。しかも、実際にインテリアデザイナーとして成功するほどセンスのある人間だから、なおさら何も言えなくなってしまう。

 

 そんな生活に夫が息苦しさを感じてしまうのも理解できる。娘たちの独立をきっかけに別居を宣言する。それに対してショックを受ける妻。全ては良かれと思ってやってきた事だから当然だ。おそらくはその理由を上手く理解できていなかったのではないだろうか。

 

 

 この後は、落ち込み苦しむ妻が描かれていくのかと思いきや、その三人の娘たちを中心に描かれていく。彼女たちは母親の血を引き、彼女を見て育ってきたわけで、その反映でもある。しかも、皆が同じように母親の血を引き継いだわけではなく、それぞれが違った形で違った部分を受け継いでいる。そんな彼女たちを描く事で、母親の心情をも映し出している構図が上手い。

 

 そんな中で、三人の娘たちが共通して母親から影響を受けたのは、芸術への愛だろう。それぞれが芸術関係の仕事に就き、その夫も芸術関係の人間だ。ただし、そのセンスを全員が受け継いだわけではない。母親は次女がセンスを受け継いでいないことにがっかりしているが、父親は次女が母親に似ず、自分に似ている事で彼女を愛している。しかし、そんな次女は母親に最も憧れているという、皮肉で悲しい関係が浮き彫りになっている。

 

 そんな娘たちが父親を見る視線は冷めている。思うところがあっても表立って何か言うわけではなく、ただ遠巻きに見つめている。父親としてはつらい所だが、だけどもうそんな視線を気にしてオドオドして生きるのは嫌だと開き直ったのだろう。そう決意しているだけに迷いがない事は伝わってくる。三人の娘たちのパートナーたちが、同じような苦労をして、どう対処するべきか戸惑っているのと対照的だ。

 

 基本的には音楽もなく、静かに展開する静謐な映画だ。母親の気高さや他人へのつれなさを表しているようでもある。善意だからと正義面して、他人に強制してはいけないなと思い知らされる。他人を変えようとは思わないことだ。三人の娘たちが並んで窓から外の海を眺めるラストシーンの構図が良かった。深い余韻が残る。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本

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出演

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ジェラルディン・ペイジ/E・G・マーシャル/メアリー・ベス・ハート/クリスティン・グリフィス/モーリン・ステイプルトン/サム・ウォーターストン/リチャード・ジョーダン 

 

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  • クリスティン・グリフィス
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インテリア (映画) - Wikipedia

 

 

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