★★☆☆☆
あらすじ
出所後、赤線地帯に戻ってきた男は、一人の女の元に通うようになる。
感想
赤線地帯における人間模様。様々な過去を持った女たちが集まり、そこに様々な思いを背負った男たちが群がる。低予算感はあるが、赤線地帯の猥雑な雰囲気はよく出ている。それと同時に、カメラ目線で話しかけたり、時代設定の違うアンパンが描かれた服を着ていたりと、ワイルドで自由奔放に撮っている様子も感じ取れる。
主役として一応は中村獅童が据えられているが、物語は様々な人物たちを描いた群像劇となっている。登場人物たちの中では、娼館のオーナーを演じる荒川良々の怪優ぶりが際立っていた。おそらくアドリブで繰り広げられている会話シーンでは、ほぼ主導権を握って場を引っ張り、独特の雰囲気を作り出すことに大いに貢献している。これはあまりやり過ぎてしまうと単なる悪ふざけやひとりよがりのマスターベーションになってしまう恐れがあるが、その辺はちゃんと許容範囲に収めて回避しているのもすごい。
物語は、一人の女とその元に通う主人公と永井荷風をモデルとした書けない作家、この三人の姿が中心となって描かれていく。ただ断片的なシーンばかりで、あまり登場人物たちの心模様は見えてこない。イメージ先行というか、雰囲気重視の映像で、それらがただ無為に積み重ねられていくばかり。物語に深みが増すことはなかった。
主人公は、何件も強姦事件を起こして服役し、出所後も再びすぐに事件を起こしてしまうような人でなし。そんな主人公が、人を一人殺してしまったくらいで動揺し、オロオロしているのがよく分からなかった。しかも居ても立ってもいられなくなって女に駆け寄り泣きつく始末。そんな主人公を見て、ここらが潮時とばかりに男につき合ってしまう女もまた軟弱すぎるように思えた。赤線で生きる彼らは、タフそうに見えるが実際はそうでもないという事を描きたかったのだとは思うが、いくらなんでもナイーブ過ぎなのではと拍子抜けしてしまった。
スタッフ/キャスト
監督/撮影/編集/音楽 奥秀太郎
出演 中村獅童/つぐみ/小松和重/片山佳/荒川良々/今奈良孝行/山田広野/野田秀樹/小谷陽子
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