★★★☆☆
あらすじ
病院の前でミステリアスな女性に声をかけられた劇作家の男。
感想
夢とうつつを行ったり来たりするような幻想的な映画。鈴木清順監督らしい独特の世界観がこの雰囲気にぴったりと合っていて、まるでその中に自分まで迷い込んだような気分になる。
松田優作が主演しているが、この映画での彼は息子の松田龍平とそっくりだ。野太い声がなければ見分けがつかないかもしれない。よく見るとそんなに男前ではないのだが、でも目が離せなくなるような存在感を放っている。その他の出演者では、加賀まりこが印象的だった。彼女は個人的に怖いおばさんというイメージが強いが、若い頃は可愛かったのか。小泉今日子的存在感がある。それから若い時の楠田枝里子は、今と大分違うのでしばらく気づかなかった。
主人公は大楠道代演じる女に心を奪われるのだが、女は彼を夫に対するさや当てに利用しているという印象が強い。夫のもう一人の妻と心の中で張り合い、そんな事をさせる夫に腹立たしさを覚えている。幻想的な雰囲気で惑わされそうになるが、わりとストーリーは分かりやすいのかもしれない。
ただ、そんな二人の妻を持ち、そこに主人公を投入して、余裕しゃくしゃくで弄んでいるように見えた中村嘉葎雄演じる男が、最終的には女の情念にからみ取られてしまったのは意外だった。人間はそんな簡単に操れるものではないという事か。
真面目にストーリーを追い過ぎるとわけが分からなくなって嫌になりそうだが、こういうものだと広い心で鑑賞すれば、奇妙な間や不思議な映像など、それぞれのシーンを結構楽しめる。特に終盤の子供歌舞伎の舞台のシーンは、不思議な空間が出来上がっていて面白かった。
スタッフ/キャスト
監督 鈴木清順
原作 陽炎座
製作 荒戸源次郎
出演 松田優作/大楠道代/中村嘉葎雄/楠田枝里子/加賀まりこ/大友柳太朗/佐藤B作/麿赤児/内藤剛志
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