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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「黒の奔流」 1972

松本清張 黒の奔流

★★★★☆

 

あらすじ

 自分の弁護で無罪を勝ち取った美女を事務所の事務員として雇うことにした弁護士の男。

 

感想

 登場人物たちがなかなかゲスい。女を暴行できるか仲間と賭けをする男や、払うお金がないからと体を差し出そうとする女。弁護士である主人公も「弱いものの味方になりたいんだ」とか言いながら弱みにつけこみ女に手を出す。これらは当時もそれなりに眉をひそめる行為だったのだろうが、それでも人々の許容範囲だったのかと思うと、昭和すごいなとの感を強くしてしまう。今とは違ってまだまだ人々の心に荒ぶるものがあったという事か。

 

 そんな人間達の中でも主演の山崎努は抜群の存在感。ギラギラしているしガツガツしている。そのくせ、窮地に陥ると何も出来ずにあたふたするばかりで情けなく、実に人間味に溢れている。政略結婚に向けての大事な会食の場に愛人がやって来た時の主人公のオロオロぶりは、もはやコントみたいで笑ってしまった。ラストもナイフを手にした女を相手に無防備すぎるだろうとツッコみたくなる。

 

 

 映画の序盤は、主人公が国選弁護士として殺人容疑のかかった女を弁護する裁判が中心となる。女との面会の様子や現場を視察するシーンと法廷のシーンがシームレスでつながり、流れるように判決まで持っていく演出は見事だった。普通にやったら一本の映画になってもおかしくないような内容なのにコンパクトにまとまっており、それでいてちゃんと法廷ものの面白さも失っていない。

 

 そして裁判が終わってからは、主人公の愛人となった元被告の女との愛憎劇となっていく。野心のある主人公は最初から彼女のことを愛人としてしかみておらず女もそれを了承していたのだから、途中で心変わりをしてしまった愛人が悪いだろうと思わなくもないのだが、いざその状況になって初めて女は本当の気持ちに気づいたのだから仕方がない。男女の関係なんてそんなものだ。女が「私馬鹿だから…」と何度も繰り返すのがなんとも言えず物悲しかった。ラストも男の意図に気づいていたのに怒るわけでも責めるわけでもなく、あんな結末で満足してしまう女が切なかった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 渡辺祐介

 

出演 山崎努/岡田茉莉子/松村達雄/松坂慶子/中村伸郎/穂積隆信/佐藤慶/菅井きん

 

種族同盟 - Wikipedia

 

 

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