★★★☆☆
あらすじ
主人公、金田一耕助が人探しのためにやって来た島で、殺人事件が続けて起きる。
感想
なんとなく「金田一耕助」という人物は、どこかだらしなくて隙だらけのキャラクターというイメージがあり、それが逆に人を油断させて色々な事を聞き出せるのだろうと思っていたのだが、今回の鹿賀丈史演じる金田一耕助は、全然そんな感じがしないキャラクターだった。眼力が強くて近寄りがたく、警戒してしまいそう。逆に怖すぎてすべて喋ってしまうという事はあるのかもしれないが。
島の人々が怪しいそぶりを見せる前半はそれなりに面白い。そして「八つ墓村」と同じように、この島にも平家の落ち武者伝説があることが語られる。しかし、その後も権力者の栄枯盛衰はあったはずなのに、なぜ平家の落ち武者伝説ばかりが各地に残っているのか不思議だ。それぐらいしか話題がないような辺鄙な場所に逃げ込まなければならない程、源氏の探索は厳しかったという事か。
中盤に殺人事件が立て続けに起きる。しかし、みんなのリアクションが薄いのが気になった。驚いたり悲しんだりする人もあまりおらず、彼らが殺された理由を探ろうとする動きもあまりなく、なんだか盛り上がりに欠ける。
そしてだいたい結末に見当がついてからの終盤はかなり冗長に感じた。突然の岩下志麻のお色気シーンと演技力披露大会、金田一耕助の住居侵入を繰り返すコソ泥のような捜査と急に力が入り出した印象。洞窟でのクライマックスも、ここぞとばかりにおどろおどろしさを詰め込んできて、無理やりな強引さを感じてしまった。積年の思いが募っての事件かと思いきや、ただの行き当たりばったりの犯行の尻拭いをしていただけ、という真相もかなり冷める。
当時の時事ネタとして、冒頭にジョン・レノンの死を取り上げて、最後はビートルズの「レット・イット・ビー」が流れて終わる。ただし、ビートルズではなく謎の歌手によるクセが強めの歌唱でイラっとしてしまった。ちゃんと本物を使っていれば良い雰囲気が出たのに、と思ったのだが、どうやら上映当時は本物を使っていたが使用期限が切れたのでその後差し替えた、という事らしい。でもそれならクセが強いカバーじゃなくて、素直な歌唱のカバーを使って欲しかった。
スタッフ/キャスト
監督 篠田正浩
脚本 清水邦夫
製作 角川春樹
出演 鹿賀丈史/室田日出男/古尾谷雅人/伊丹十三/岩下志麻/岸本加世子/宮下順子/武内亨/中尾彬/佐分利信/石橋蓮司/根岸季衣/浜村純
撮影 宮川一夫