★★★☆☆
あらすじ
父親の死後にその生い立ちを知ることになった男。
感想
2編からなる2部構成の物語。前半は、父親が死んだ後にその生い立ちを知った男の話。一緒にいても、いつも自分の心の殻に閉じこもっているようだった父親の、その原因を知ることになる。
しかし父親は孤独を抱えていたのに、機械的な受け答えをしているだけで、表面的にはそんな風には見えなくなる、というのは不思議な気がする。案外、心と心の交流なんて、そんなに人は求めていないのかもしれない。単純な言葉のやり取りをしたという事実だけでコミュニケーションを取ったと人々は満足してしまい、その中身はたいして重要ではないという事だろう。そう考えるといつも誠実な対応をしようとする人は生きづらい、というのも分かるような気がする。ある程度の適当さも必要だ。
この前編は、語り口が個人的にしっくりと来て好みの感じだったのに、後編はがらりと様相が変わってしまって、とっつきにくい印象の文体になってしまった。外側から見た孤独な人間の話から、孤独な人間その人が一人語りする内容に。
部屋に籠もり、ひとり内省を続ける男。だがその心は、過去の思い出や様々な事物と網の目のようにリンクして小宇宙を形成し、決して孤独ではない。そんな風に見えなくても心に孤独を抱えていたり、逆に孤独そうに見えて実際はそんな事はなかったりと、「孤独」とは捉えどころのないものだ。多くの人がこれを扱いかねて、持て余してしまっている。
著者
ポール・オースター
登場する作品
「記憶術大全」 コズマス・ロッセリウス
「一八四四年の経済学・哲学手稿」 カール・マルクス
「Let's Go Trucks!(レッツ・ゴー・トラックス)」
「Solitude (Billie Holiday Sings)(ソリチュード)」
「ゾーハル〈新装版〉:カバラーの聖典(叢書・ウニベルシタス)(ゾハール)」
「カッサンドラ」 リュコフロン
「カッサンドラ リュコフロンの希臘語原典より翻訳と注解」 ロイストン卿
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