★★★☆☆
あらすじ
神戸の中学を退学となり、豊岡の中学に入学させられた青年は、近所の病院の娘に恋をする。
感想
タバコを吸い、ドスを持ち歩くような不良少年が主人公だ。このタイプのキャラクターはたいてい単純でまっすぐな、直情的な性格の持ち主として描かれがちだが、この主人公はこれに加えて知性を感じさせるのが特徴的だ。
素行不良だと怒鳴り込んで来た上級生の風紀委員を、反論して黙らせてしまったシーンが印象的だったが、主人公は決してすぐに殴り合ったりはせず、まずはちゃんと話し合おうとする。しかも論破した後は勝ち誇って相手を馬鹿にするのではなく、お菓子を配ったりして和やかな雰囲気に持っていこうとしていたのには感心した。
この年頃はとにかく誰にでも反抗的な態度でマウントを取ろうとしてしまいがちだが、相手とはただ意見が対立しているだけで決して敵ではない、とでも言うような主人公の態度にはとても好感が持てた。見習いたいところだ。
さらに主人公は恋愛にも積極的だ。すでに何度も女性問題を起こしており、今回も近所の病院の娘に恋をする。しかも淡い恋心とかなんかではなく、がっつりとした恋仲となる。この手のキャラは硬派で女性には奥手というイメージもあるが、主人公は全然そんなことなかった。ただ、女遊びをする不良もいるから、主人公はこちら寄りということか。田舎ではなく、いかにも都会の不良らしい。
そんな主人公と恋人が普通に会話しながら合間合間にキスをするシーンは、奇妙で面白かった。この映画では、こんな風に鈴木清順監督らしい独特なタッチの映像が多少見られるが、まだまだ控えめな印象だ。もっと色々期待してしまった。
なかなか新鮮で爽やかな不良映画だったが、ラストがちょっとグダグダしてしまった。しかしこれは自伝的な小説を原作としているので仕方がないのかもしれない。こんな風に昔は想いを寄せる人が死んでしまうことは今よりも全然多かったのだろうなと想像すると、なかなか切ないものがある。刹那的になってしまうのも分からないではない。
スタッフ/キャスト
監督 鈴木清順
脚本 笠原良三
出演 山内賢/田代みどり/和泉雅子/高峰三枝子/芦田伸介/佐野浅夫/野呂圭介
登場する作品
赤い部屋: 芸術家ならびに作家の日々の素描 (1000点世界文学大系)
関連する作品
次作