★★☆☆☆
あらすじ
親の反対を押し切って、奉公に来ていた女と駈け落ちした地方の大地主の息子。
感想
大地主の息子と小作人の娘の許されぬ恋。女はそれを自覚していて、二人を引き離そうとする周囲の意向を汲み、遠い場所に奉公へ出ることに同意していた。なのに、男が会いに来たらすっ飛んでいったのには、本当に理解しているのかな?と思ってしまった。そこは敢えて会わないのが正解なのでは?
結局、自分の心のおもむくままに動いてしまう女という事で、魔性の女と陰口を叩かれるのは仕方がないのかもしれない。その生き方は全然悪くはないのだが、こんな封建社会的な田舎では生きづらいだろう。しかし誰も足音すら聞こえないような状況で、彼の足音が聞こえて飛んでいく彼女は、まるで特殊能力の持ち主のようだった。一応これは伏線にはなっているのだが。
やがて二人は駈け落ちし暮らし始める。悲恋というわりにはすんなりといったなと思っていたら、ここから戦争が彼らの生活に影を落とす。そして悲しい結末。結局、彼らを苦しめたのは戦争だった。戦争さえなければ、彼らはその後も貧しいながらも幸せに暮らせたはずだ。あまり駈け落ちは関係なかったと言える。
悲しい結末を迎えてそのまま終わるのかと思ったら、ここから残り10分くらいがホラーでオカルトな時間だった。気持ちは分かるが実際にやっちゃダメなやつだろうとドン引きしてしまった。想像するだけと実際に実行するのとでは天地の差がある。これが人を普通の人とヤバい人に分ける分水嶺なんだなと実感した。
こんな内容の物語が、何度も映画化やドラマ化されるほど人々の心をとらえているのかと驚いてしまった。不思議だ。
スタッフ/キャスト
監督 西河克己
原作 絶唱 (講談社文庫)
出演 舟木一夫/和泉雅子/太田雅子(梶芽衣子)/花澤徳衛/志村喬
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