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「泥だらけの純情」 1963

泥だらけの純情

★★★★☆

 

あらすじ

 チンピラの男は、街中で絡まれているのを助けた上流家庭の女子高生と恋に落ちてしまう。

 

感想

 チンピラの男と富豪の娘の身分違いの恋が描かれる。箱入り娘が見たことのないタイプの男に出会って惹かれてしまう、いかにも若さゆえの恋なのだが、それを演じる吉永小百合が良かった。一見、普通の可愛らしい少女でしかないのだが、相手を黒目がちの瞳で上目遣いに見つめながらグイグイ行く姿には魔力があった。いつもニコニコしているが、決して信念を曲げない強さがあることが伝わってくる。

 

 一方のチンピラの主人公は、彼女に惹かれつつも心のどこかで二人が釣り合わないことを気にしている。グイグイ来る彼女を受け止めきれず、つい弱気になって逃げようともしてしまう。だがこの関係だと、男は引け目を感じてしまうものだから仕方がないところはある。ただ、「俺なんか町のダニだ」と卑下する主人公を否定できないくらい、普通にタチの悪いチンピラがやりそうなことをやっているので、そこがちょっと感情移入しにくかった。

 

 

 身分違いの恋の場合、貧しい側の周囲は応援し、金持ちの側の周囲が大反対して引き離そうとするのが定番のパターンだが、この映画では貧しい側の主人公の周囲から「そんな女とは別れろ」という言葉が出てきたのは意外で新鮮だった。ただ彼らは、彼女が金持ちだからではなく、単純に主人公が女にうつつを抜かして組に迷惑をかけそうだったからではあるのだが。

 

 結局、彼女の周囲も当然のように反対し、二人は追い詰められてしまう。それでも雪国に逃れることが出来たのだから、そこで二人でひっそりと生きて行けばいいだろうと思ったのだが、二人の出した結論は違った。若さゆえの視野の狭さとも言えるかもしれないが、それよりも彼らが純粋にそうしたかったからなのだろう。この劇的なシーンを、敢えて淡々とあっさり描いたのは好感が持てた。逆に悲しみがより深く感じられ、余韻に残った。

 

 そんな美しい悲劇が展開される物語の中で、唐突に挿入される脇毛のくだりはすごかった。急に監督の性癖を見せつけられたような異様なシーンで、強烈なインパクトだった。

 

スタッフ/キャスト

監督 中平康

 

原作 泥だらけの純情 (1963年) (春陽文庫)


出演 浜田光夫/吉永小百合/平田未喜三/小池朝雄/和泉雅子

 

音楽 黛敏郎

 

泥だらけの純情

泥だらけの純情

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泥だらけの純情 - Wikipedia

 

 

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