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「アナザーラウンド」 2020

アナザーラウンド(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 同僚の友人らと共に、血中アルコール濃度を0.05%に保って生活する実験を始めた高校教師。

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 アカデミー賞国際長編映画賞。117分。

 

感想

 友人らと共に、ほろ酔い状態で生活する実験を始めた高校教師が主人公だ。それだけだとただの酒好きみたいになってしまうところを、実験と称して目的を定め、ちゃんとデータを取りながら行うところが偉い。これもまた酒好きの悪知恵といえなくもないが。

 

 そもそも何でそんなことを始めたのだ?と思ってしまうが、それには彼らの現在の状況が影響しているだろう。主人公は、ルーティン的に仕事をこなし、家庭では妻との会話もなく、子供たちも手がかからなくなって刺激がない。生活に張り合いがなく、覇気の無い惰性的な生活を送っている。いわゆる中年の危機というやつだ。それを乗り越えるために始めたのがこの実験だ。

 

 酒を飲み始めたことで主人公や友人たちの授業には活気が生まれ、私生活にも彩りが生まれていく。なんとなく分からなくもないが、そこまでうまくいくのかと半信半疑になってしまう。だが、昼間から酒を飲んでいるという意識がより気分を高揚させ、より良い効果をもたらしているのかもしれない。

 

 個人的にはそのままほろ酔い状態での実験を続けてみて欲しかったのだが、やはりというべきか、実験はエスカレートしていく。そして当然というべきか、破綻してしまう。自制が効かなくなり、やすやすと一線を越えてしまいがちなのもまた、アルコールの特徴と言えるだろう。

 

 

 悪い面だけでなく、良い面も描き、アルコールが人々の生活に与える様々な影響を描く物語となっている。アルコールは最高の一日や最悪の一日を作り、また人生を台無しにすることも、彩りあるものにすることもある。どんな影響を受けるか、どう付き合うかは人それぞれだ。

 

 そんなメッセージが伝わってくるのだが、でもそんなことはわざわざ言われなくても分かってるしなと思ってしまう自分がいた。ありふれたお酒のエピソードを並べただけに感じてしまう。

 

 ただ本題はともかく、主人公らの友情や生徒たちとの交流には心温まるものがあった。特にラストでの卒業した生徒たちを心から祝福する様子には、いい先生たちだと胸が熱くなった。そして気持ちよく踊る主演のマッツ・ミケルセンの姿が印象に残る。これが撮りたいがためにこの映画は作られたような気さえした。幸せな余韻に浸れる。

 

 それから普通の教師の彼らが、良いロケーションの良いインテリアの家に住み、仕事の後には仲間と洒落たレストランで会食して緑豊かな公園ではしゃぎ、休暇には大自然の中でキャンプしてと、ずいぶんと愉快そうな暮らしをしているのが羨ましかった。これぞ健康で文化的な生活といったところだが、映画の世界だからなのか、デンマークではこれが普通なのか、どっちなのだろうと気になった。

 

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 トマス・ヴィンターベア

 

脚本 トビアス・リンホルム

 

出演 マッツ・ミケルセン/トマス・ボー・ラーセン/マグナス・ミラン/ラース・ランゼ

 

アナザーラウンド(字幕版)

アナザーラウンド(字幕版)

  • マッツ・ミケルセン
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アナザーラウンド - Wikipedia

 

 

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