★★★★☆
あらすじ
クイズに当選して日本旅行ツアーにやってきた香港の男は、旅行中に様々なトラブルに見舞われる。
室田日出男、近藤等則ら出演。119分。
感想
家族で怪しげな商売をしながら、勝手に建てた水上の家で暮らす香港の男が主人公だ。前半は彼が日本に行き、新人のツアーガイドの女と各地を刊行する様子が描かれる。
だが巡る場所が強烈で、90年頃の日本にもまだこんな場所があったのかと驚いてしまう。訪れる飛田新地や浅草などは猥雑さに満ちていて、まるで東南アジアかどこかの雑踏にでもいるような気分になる。紛れもなく日本もアジアの一部だと痛感させられる。
そして人々も強烈だ。途中で釜ヶ崎の人々をとらえたドキュメンタリー映像みたいになるシークエンスがあるのだが、出てくる人がみな超個性的で興味深く、ずっと見ていられる。またガイドの女がそんな人たちの中で歌う「なんてったってアイドル」のカラオケも妙に心に染みた。
ツアー中に主人公は荷物を盗まれ、なぜか捕まえた泥棒の女も加えて一緒に旅するようになる。無茶苦茶な展開で各シーンの演出も自由奔放だが、アジア的カオスの雰囲気があって楽しい。熱気やエネルギーが感じられる。
後半、主人公は香港に戻ってくる。なぜかガイドの女と泥棒の女も一緒だ。しかも泥棒の女は急に男と女の二人一役になる意味不明な展開で、わけが分からなくて面白い。そして夜の町で高級時計の偽物を売ったり、観光客からものを盗んだりと、主人公一家の怪しげな商売の様子が描かれる。それが繰り広げられる香港の下町にもいかがわしい魅力がある。
しかし主人公らは、香港返還を前に国際的なビル開発を計画する日本企業に、地上げの脅しにあうようになる。そして前半とはうって変わり、一家が彼らと戦う様子が描かれる。
後半はややシリアスだが、日本にも香港にもあるカオスで魅力的な下町が姿を消していくことに対する警鐘だ。この映画から30年以上経って、きっと香港も東京も大阪も整備され、キレイになって治安も良くなったのだろうが、その分町の面白みは減ってしまった。ただ、それで構わないという人は多いのだろう。
渋谷再開発、失われた寛容さ 高まった同質性、人を「選別」する街に 社会学者・南後由和さんと歩く:朝日新聞
大阪や香港の何でもない街かどの映像にグッと来たりして、アジアの熱気とそこに住む人々のエネルギーが伝わってくる映画だ。なんだか元気になる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 山本政志
脚本 宇野イサム
出演 新井令子/ツェ・ワイ・キット/リ・チエオン/徐廣林/周穎端/鈴木みち子/室田日出男/ツアン・メイキー/張永均/リー・ワイラン/陣良誠/野田貴子/鳳ルミ/胡弘達/何柏光/大上留利子/松本雄吉/ランキン・タクシー
音楽/出演 近藤等則
