★★★★☆
あらすじ
テレビの報道局でプロデューサーとして働く女性は、新しくやって来たニュースキャスターの男性に恋をする。
感想
バリバリと仕事を仕切るプロデューサーの女と、能力は低いが見栄えは良いニュースキャスター、彼女の良き理解者で能力も高いリポーター、二人の男性が織りなす三角関係。同じ報道局で働く三人の恋愛や友情、また仕事や人生に対する姿勢が描かれていく。
個性的な三人の中でどうしても同情してしまうのはリポーターの男だ。知識も豊富で頭が切れ、ジャーナリストとしての能力も高い。だが人を惹きつけるような魅力がないので、本人が目指しているアンカーマンのような花形の仕事は任せてもらえない。容姿やカリスマ性といった本人の努力ではなんともならない越えられない壁があるというのは残酷な現実だ。本人もそれに薄々気づいているだけに、余計な力が入ってしまって本来の力を発揮できずに失敗してしまうという悪循環。しかも良くある話ではあるが、意中の女性はライバルの男に夢中になっているという悲しい展開。そんな中でも常に冗談を言ってピエロのように明るく振る舞う彼の健気さが逆に切なかった。
それから見栄えが良いだけと、意識の高い二人に内心では馬鹿にされているキャスターの男も可哀そうではある。少なくとも彼は自身の能力の低さを認めてそれを改善しようとしているし、それをカバーするために武器である見栄えの良さを磨いてきた。彼は彼なりに頑張っている。ただ、天性のものは備えているので努力さえすれば何とでもなる、というのはやはり不公平な感じはしてしまうが。それから、この手の人で一番危ういのは、自身が恵まれているのは見た目の良さのおかげではなく、自分の能力の高さ故だと勘違いしている時だろう。周囲の人間も案外そう思わされてしまいがちなので、注意しなくてはいけない。
そんな二人の男に挟まれたホリー・ハンター演じる主人公の女性。優秀だが優秀過ぎるがゆえに恋愛関係では恵まれない。そんな彼女が、「ニュースは中身より見栄え」という彼女が危惧していたマスコミの風潮を体現するかのような男に恋をしてしまったというのは皮肉だ。報道には一家言ある彼女も、恋愛では面白いニュースを喜ぶ大衆のようにコロッといかされてしまった。だが越えられない一線は何とか守ったという事か。
決して一枚岩ではない三人が、それでも仲間として互いに意見を言ったりアドバイスをし合う姿は良かった。こういう多様性のあるチームがまとまった時は強い。そして様々な壁にぶつかりながらも、賛否はあれど決して自らの矜持は捨てなかった三人だからこそ、離れ離れになって何年か過ぎた後でも、ためらうことなく再会することが出来たのだろう。皆あの時の気持ちを持ったまま、なんら恥ずべきことなく生きてきた。彼らの充実した表情にそれが読み取れる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 ジェームズ・L・ブルックス
出演 ウィリアム・ハート/ホリー・ハンター/アルバート・ブルックス/ロイス・チャイルズ/ロバート・プロスキー/ジョーン・キューザック/クリスチャン・クレメンソン
音楽 ビル・コンティ