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「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」 2019

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。

★★★☆☆

 

あらすじ

 ガンとなった母親の死を看取ることになった主人公。 

 

感想

 タイトルからしてそうだが、主人公の母親に対する愛情が溢れまくっている物語。主人公は母が末期のがんだという事を知り、彼女が死なないために全力を尽くそうとする。とはいえ実務面、体を拭いたり付き添ったりといった実際の面倒は主に恋人に任せきりで、本人は百度参りだったり死んでほしくないと自身の気持ちをぶつけるだけの精神面担当だったのはある意味ですごい。正直主人公よりむしろ、赤の他人の面倒をここまで看ることができる主人公の恋人の聖人ぶりに感銘を受けてしまう。

 

 それからこの映画は、主人公と母親の関係を中心にしているからとはいえ、母親の夫、主人公の父親の存在感が希薄なのが気になった。描かれるのはいつも母親と主人公の二人の関係だけで、長年連れ添った夫婦の関係はごくわずか、ついでのように描かれている。なんだか主人公が他の家族を差し置いて、独りよがりに振る舞う人物に思えてきた。彼のやっていることのほとんども、母親のためというよりも母親のいない世界なんて嫌だという彼自身のためにやっているような印象を受ける。でもきっとこういう周りが見えず突っ走ってしまうような人でないと面白い漫画は描けないのだろう。

 

 

 一応、母親の死後には父親や兄の心情も描かれるのだが、それまでほぼ何もなかったので唐突だなと戸惑ってしまった。ちなみにそれらのシーンはどれも悪くはなく、うっかりするとこちらも目頭が熱くなってしまいそうにはなるのだが、人が死んで悲しいのは当たり前だしな、という冷めた気持ちがどこかにあった。でもよぼよぼと海に向かって進む父親役の石橋蓮司の後ろ姿はグッと来た。これらのシーンに自然とつながっていくような描き方をすればもっと良くなっていたような気がする。

 

 とてもピュアな母と息子の物語。ただ、純粋真っすぐ過ぎて逆に人間味が感じられず、どこか特殊な世界の話のようで、あまり一般化して自分の事として共感を得られにくくなってしまっているような気がする。基本的にずっと悲しい話が続くだけなので辛くもあり、いい話ではあるが、この話は家族だけの思い出としてそっと胸にしまっておけば良かったのでは?と思ってしまった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 大森立嗣

 

原作 母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。(新装版)

 

出演 安田顕/松下奈緒/村上淳/石橋蓮司/倍賞美津子

 

音楽 大友良英

 

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。 - Wikipedia

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