★★★★☆
あらすじ
異常をきたした人間が人間を襲撃する光景を至る所で目撃した看護師の女性は、安全な場所を求めて逃走し、やがてショッピングモールにたどり着く。
1978年の映画「ゾンビ」のリメイク作品。100分。
感想
ゾンビから逃れてショッピングモールに立てこもった人たちの物語だ。21世紀のゾンビブーム初期の作品であり、「ゾンビ」が大衆化した70年代のヒット作をリメイクしていることもあって、内容は極めてクラシックなゾンビ映画となっている。
主人公たちは最初「ゾンビ」というものを知らない。だから当然、噛まれたらたゾンビになることも、倒すには頭を撃てばいいことも知らない。その後のあの手この手の様々なバリエーションで作られたゾンビ映画を見た後だと、登場人物たちがゾンビに驚き、学習していく姿は逆に新鮮だ。愛する人がゾンビに噛まれて苦悩するようなオーソドックスなシーンもある。
序盤でゾンビ発生による混乱やショッピングモールに逃げ込んだメンバー同士の疑心暗鬼の状態が描かれた後、突如映画はリラックスモードとなる。チェスをしたり、ゾンビで遊んだり、皆で食事して会話を楽しんだりするようになる。
最初は突然の異常事態に分からないことが多くて不安だらけだが、時間が経過し情報も集まってくると、力の抜きどころが分かって来て皆次第に落ち着きを取り戻す。同じような精神状態を体験したコロナ禍を経た後だと、彼らの心境がよく理解できる。ネットが普及していれば陰謀論にハマったり、生半可な知識で専門家を小馬鹿にしはじめるフェーズだ。
だが、彼らに生まれた心の余裕が過信となるのか、その後に犠牲者が続出するのが印象的だ。そんな余計なことをしなければいいのにと思ってしまうが、慢心の他にもストレスによる破れかぶれの気持ちもあったからだろう。慣れたといっても異常事態には変わりない。心は気づかないうちに蝕まれている。
最後はショッピングモールを脱出し、新天地を目指す。ここでチェーンソーが色んな意味で大活躍して面白かった。そのビジュアルも含めてチェーンソーには銃にはない怖さがある。
ドラマチックな展開がありつつも無事船に乗り込み、エンディングを迎える。だがエンドロールでイヤな感じのその後が断片的に描かれ、後味が悪くなるのがまたいい。
ゆったりとしたテンポで牧歌的とすら感じてしまう古典的なゾンビ映画だが、じっくりと丁寧に描かれていて見ごたえがある。ゾンビ映画の基本を知る上でも押さえておきたい映画だ。
スタッフ/キャスト
監督 ザック・スナイダー
脚本 ジェームズ・ガン
原作 「ゾンビ」(1978)ディレクターズ・カット・エディション [DVD]
製作 マーク・エイブラハム/エリック・ニューマン/リチャード・P・ルビンスタイン
出演 サラ・ポーリー/ヴィング・レイムス/ジェイク・ウェバー/メキ・ファイファー/インナ・コロブキナ/マイケル・ケリー/ケヴィン・ゼガーズ/タイ・バーレル/リンディ・ブース/ジェイン・イーストウッド/キム・ポイリアー/マット・フリューワー/ハンナ・ロックナー/ジャスティン・ルイス/スコット・H・ライニガー/ケン・フォリー/トム・サヴィーニ
関連する作品
リメイク元のオリジナル