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「高慢と偏見とゾンビ」 2016

高慢と偏見とゾンビ(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 ゾンビが跋扈する世界。裕福で男前の独身貴族が引っ越してきて色めき立つ5人姉妹だったが、次女は高慢と偏見の態度を示した男の友人に嫌悪感を抱く。

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 ジェーン・オースティンの「高慢と偏見」にゾンビをマッシュアップしたパロディ小説が原作。108分。

 

感想

 古典の英国貴族の物語にゾンビ要素が加わった作品だ。貴族の娘たちはゾンビに対応するためにアジアに武術留学し、社交パーティーに参加する際は華やかなドレスを身にまといつつも、武器のナイフを携帯することは忘れない。パーティーから戻れば、皆で鍛錬の組手をし、攻撃し合いながらガールズトークと、今まで見てきた英国時代劇では見ることのなかった意外性のあるシーンのオンパレードになっている。

 

 ゾンビは基本的に野外にいて隔離されているが、割とあっさりと貴族たちの世界に侵入してくる。ただある程度は想定内のようで、見つけ次第きっちりと倒されていく。

 

 

 五人姉妹の次女である主人公も、留学経験と日ごろの鍛錬の成果を活かして、動じることなく仕留めていた。確実にとどめを刺すために躊躇うことなくゾンビの頭を踏みつぶしたり、気配を察して武器を構えるところなどはカッコよくて頼もしい。

 

 そんな中で主人公と貴族の男の恋物語が進行していく。ウケを狙っただけのタイトルかと思っていたが、内容もかなり元ネタの「高慢と偏見」に忠実で驚いた。面白さに定評のある小説なので、ゾンビは置いておいても、単純に恋愛話として楽しめる。

 

 初対面で相手の男に反感を持った主人公は、冷たい態度をとる。普通の女性なら攻撃的な言葉や無視など、気の強さでそれを表現するのだが、このゾンビ映画の場合、主人公は実際に強いので力でそれを示す。

 

 主人公の妹がゾンビになっていないか確認するために男が放ったハエを、中国の武術の達人ばりに、すべて素手で捕まえてしまったり、告白してきた男を前蹴りで吹っ飛ばしたりする。彼女の思わぬリアクションに、そう来るかと思わず笑ってしまう。

 

 もしかしたらゾンビ要素を加えたというよりも、か弱い女性に男性同様の身体的強さを与えた話、というのが本質かもしれない。

 

 終盤になると「高慢と偏見」の内容を離れ、ゾンビ映画らしい展開となる。ただがっつりとゾンビとの戦いを描くわけではなく、大まかな流れだけだ。もうちょっとゾンビ映画としての見どころも欲しかったが、それをやってしまうと本筋がブレてしまうと危惧したのかもしれない。だがそう思わせておいて、恋愛映画としてのハッピーエンドを迎えた後に、ゾンビ映画らしい結末が用意されていたのは好印象だった。

 

 衣装やインテリアが思っていたよりもちゃんとしていて、英国時代劇としての見ごたえがあり、時に笑えるゾンビ要素がアクセントになっている。元ネタの「高慢と偏見」と比較しながら見るだけでも面白かったが、未読だったり、ゾンビ映画として見たりすると、物足りなさを感じる部分はあるかもしれない。

 

スタッフ/キャスト

監督 バー・スティアーズ

 

原作 高慢と偏見とゾンビ *1


製作 ショーン・マッキットリック/アリソン・シェアマー/ナタリー・ポートマン/アネッテ・サヴィッチ/ブライアン・オリヴィエ/タイラー・トンプソン/マーク・ブタン

 

出演 リリー・ジェームズ/サム・ライリー/ジャック・ヒューストン/ベラ・ヒースコート/ダグラス・ブース/マット・スミス/チャールズ・ダンス/レナ・ヘディ/スキ・ウォーターハウス/ミリー・ブレイディ

 

高慢と偏見とゾンビ(字幕版)

高慢と偏見とゾンビ(字幕版)

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高慢と偏見とゾンビ (映画) - Wikipedia

 

 

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