★★★☆☆
あらすじ
廃部寸前の柔道部を救うために入部したドカベンこと、山田太郎。
感想
主人公・山田太郎は公募で選ばれたという橋本三智弘が演じている。だがあまり華がなく、主役ぽくない冴えない感じだ。岩城や殿馬、長島ら他の登場人物たちがちゃんとキャラが立っているのとは対照的だ。だがもともと「ドカベン」はまわりの強烈なキャラたちを主人公が引き立て、扇のかなめの様にまとめる構造になっているので、これでいいのか、と思わなくもない。物語が進むにつれてそんな気がしてきた。
物語は劇画タッチに描かれていく。野球や柔道、喧嘩などの漫画調の大げさなアクションシーンは、案外小気味よく映像処理されていてなかなか良い出来だった。ギャグもちゃんと振り切って演出されている。中でも、岩城と殿馬の小競り合いのシーンは面白かった。
役者陣の中では、主人公の柔道決勝の対戦相手、賀間剛介を演じた無双大介が印象的だった。他の人物たちがいかにも昭和な風貌をしている中で、一人だけ現代風だ。今やっているドラマに出ていても違和感がなさそうで、センター分けの長髪ストレート、髭づらに細身のファッションの出で立ちは、EXILE風と言えるかもしれない。変な奇跡を目撃してしまったような気分だ。
それから永島敏行演じる野球部キャプテンが、色々あって野球部は退部したと言っているくせになぜか完全なユニフォーム姿だったのは可笑しかった。多分これはボケではなく天然で、劇画調だし分かりやすさを重視したのかなと勝手に納得していたのだが、次のシーンでは普通に学ラン姿になっていてズッコケてしまった。
古い映画なので今見ると少々退屈な時間も多かったのだが、小細工なしでやり切っている感じは好印象だ。漫画の実写化としては悪くないのではないだろうか。惜しむらくは、原作の序盤と同様に、柔道映画になってしまっていることだ。やっぱり「ドカベン」なんだから野球映画を見たかった。シリーズ化を目論んでいたのだろうが、続編は作られていない。でも続編を作ってもいいレベルで、普通に続きが見たかった。
スタッフ/キャスト
監督 鈴木則文
出演 橋本三智弘/永島敏行/高品正広/無双大介/水島新太郎/吉田義夫/南利明/佐藤蛾次郎/小松方正/マッハ文朱/水島新司/川谷拓三
音楽 菊池俊輔