★★★☆☆
あらすじ
圧力に屈せず暴力団の闇を追う雑誌記者は、ハメられて殺人事件の容疑者となってしまう。
感想
主演の高倉健が雑誌記者を演じてヤクザと対峙する物語。主人公は暴力組織の闇を追ううちに、暴力団のみならず警察などの各方面から圧力をかけられ、次第に孤立していく。いつの時代も表裏どちらの世界かは関係なく、力を持った者たちは密かに手を結びあっている。そして歯向かう者が現れれば、彼らは協力して全力でつぶしにかかる。
今でも政治家が選挙妨害を暴力団に依頼したり、政治家とヤクザが結婚して官庁に圧力をかけたりすることがあるらしいので、こういうのはいつまで経っても無くならないのだなとげんなりする。
結託した権力にハメられた主人公は、殺人犯に仕立て上げられて服役することになってしまう。しかも相手はその間に主人公の妻を殺害するという徹底した極悪非道ぶり。恐ろしすぎる。さらにこれらをすべて仕組んでいたと目されるヤクザのトップが死んだことを知った主人公は、目的を見失って、出所後も自暴自棄の生活を送るようになってしまう。
この時のやさぐれた高倉健を見るのはなんだか新鮮だった。彼はどんなことがあってもじっと耐え、耐えられなくなった時は相手に向かっていく時、というイメージだった。飲み潰れたり、無闇に喧嘩を吹っ掛けたりして無為な日々を過ごす高倉健というのはあまり想像できず、なんだか若いなと思ってしまった。ただ自分が知らないだけで、若い頃の彼はこんな役をすることはよくあったのかもしれないが。
自堕落な生活を送っていた主人公だが、ある噂を耳にしたことから再び気力を取り戻し、真相を探り始める。もともと雑誌記者の話なので、ここから「ペンは剣よりも強し」を地で行く骨太で硬派なドラマが展開されると思っていたのに、主人公がペンを剣に持ち替えた復讐物語が始まったのには面食らってしまった。逆にすごいかもしれない。ただすでに雑誌記者は辞めていたし、冤罪事件の無実を証明するための控訴を取り下げた時点で、主人公はタイトル通り「ならず者」として生きていくことを決意していたのだろう。
色んな表情を見せてくれる高倉健の他にも、権力に日和ったかのように見えた義理の兄を演じた宍戸錠にもカッコいい見せ場があったりして、なかなか楽しませてくれる映画。それから由利徹の場をかっさらっていく徹底したコメディアンぶりは、面白いを通り越して見事で感心してしまった。
スタッフ/キャスト
監督
脚本 石松愛弘/澤井信一郎
出演
浜美枝/水島道太郎/小松方正/山城新伍/由利徹/室田日出男/高品格/小林稔侍/宍戸錠