★★★★☆
あらすじ
戦友に会いに来たベトナム帰還兵ランボーは、その帰り道で地元の保安官に目をつけられてしまう。
シリーズ第1作。原題は「First Blood」。97分。
感想
田舎町で保安官の嫌がらせを受けたランボーが、怒りを爆発させて彼らと対決する物語だ。「ランボー」は戦場を舞台にした映画だと思っていたので意外だったが、それは続編でのイメージだったようだ。
そして単純明快な娯楽アクションではなく、影のあるベトナム帰りの主人公が社会に疎外されて追いやられていくアメリカン・ニュー・シネマ的な匂いのする作品なのも意外だった。戦友の家族には常識的なコミュニケーションが取れていたのに、保安官に対した途端に不愛想になったのは、主人公の社会に対する不信感が表れている。
本人も後に吐露していたが、帰還兵に対する世間の態度は冷たい。国のためによく戦ったと表面上では敬意を示してくれるが、それだけだ。別に仕事を与えてくれるわけでもなく、その後は敬遠されて放置される。それどころか平和主義者には人殺しと罵られることもあるし、よき理解者だと思っていた愛国者たちにも、戦争の悲惨さを訴えたり戦争犯罪の告白をすると、途端に嫌な顔をされて遠ざけられる。これはアメリカに限らず、どこの国でも同じだろう。
本人もPTSDを抱えたらその後の人生に支障が出るし、それが家族や友人を苦しめることもある。戦争が終わればそれで終わりではなく、その影響はいつまでも残る。要するに戦争などしないに越したことはない、ということだ。
そんな社会批評性を感じさせながらも、アクション映画としてもちゃんと楽しませてくれる。敵を一人ずつ倒していく様子には凄みがあり、崖から飛び降りるシーンにはドキドキさせられた。ランボーが暗がりで光らせるぎょろりとした目にはインパクトがあった。
彼が傷の手当てをするシーンでは、腕から血がドクドクと溢れ出していて、それが妙にリアルで直視できないほどだったが、どうやらあれは本物の怪我の血で本当に縫っているらしい。その前の崖から飛び降りるシーンも実際にやったようで、あばらを折ってしまったそうだ。ジャッキー・チェンばりに無茶なことをしている。
ランボーに敵対する保安官は、仲間や街の人たちに気さくに声をかけるような人物だったので、あんなに主人公に敵意を剥き出しにするとは思わなかった。二面性があるとも、敵と味方を分けて考える人物であるとも言えるだろう。アメリカに乗り込まれたベトナムのように、よそ者がいきなりやって来たらどんなに善良な人でも良い顔はしない、ということも表しているのかもしれない。ただ、終盤に彼が殊勝な顔をして反省しているのかと思ったら、自分の手で殺したかったと言い出したのにはビビってしまったが。
ラストでついにランボーは追いつめられる。大佐に説得され、突然子供のように泣きじゃくる姿に戸惑ってしまったが、ベトナム戦争に勝てず、自信を失っていた当時のアメリカを象徴しているようにも思えた。彼は権力や体制に対しては子供っぽくなる。
そのままエンディングとなるが、この後にアメリカが彼をどう裁くのかも気になった。続編で描かれているのかもしれないが、これだけでもメッセージ性の強い一本の映画が作れそうだ。
スタッフ/キャスト
監督 テッド・コッチェフ
脚本/出演 シルヴェスター・スタローン
出演 リチャード・クレンナ/ブライアン・デネヒー/マイケル・タルボット/クリス・マルケイ/デヴィッド・カルーソ/ブルース・グリーンウッド
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
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