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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「スーパー!」 2011

スーパー!(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 妻を奪われた冴えない中年男は一念発起し、ヒーローコスチュームに身を包んで正義のために戦うようになる。

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感想

 妻に逃げられた冴えない男が主人公だ。妻に言い寄る男に何も言えず、無力感に打ちひしがれて泣き濡れる姿は情けなく、見ているこちらまで鬱々とした気分になってしまう。そんな何者でもない彼が一念発起し、ヒーローに扮して正義のために戦おうとする。このきっかけとなった啓示を受けるシーンはグロくて笑えた。

 

 普通の人間がヒーローになろうとするストーリーは「キック・アス」と似ているが、まず主人公が青年ではなく、しがない中年男だというのが違う。若気の至りでやるわけではないので、夢や希望ではなく哀愁が漂っている。何をやっても溌溂さはなく、常にしみったれた彼の生活の匂いが付きまとう。

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 そしてマジックも起きない。あくまでも現実世界で起きることとしてすべてが描かれる。だから悪人だって殴られればだらだらと血を流すし、撃たれれば腕だって頭だって吹っ飛ぶ。このあたりはヒーロー映画のパロディではあるが、確かに本当だったらこうなってないとおかしいよなと、その真実に気付かせてくれる。

 

 よく映画などで強盗犯が人質に向かって「ヒーローになろうとなんて考えない方がいいぞ」と忠告するシーンがあるが、そう考えてしまう人が少なからずいるのは、ヒーロー映画であまりグロい描写がないからなのかもしれない。ただ、余計なことをすると悲惨なことになりかねないと、皆が悪者に対して従順になってしまうことが、良いことなのか悪いことなのか、よく分からないが。

 

 

 何の能力もない主人公は、武器として工具を改良しただけの謎の鈍器を開発するのだが、それを振り回す姿はただの凶悪な暴行犯にしか見えず、割と怖かった。そんな変な事するくらいなら、もう普通に銃でいいのに、と思ってしまった。

 

 そしてヒーローオタクの若い女が彼の助手になるのだが、彼女のテンションの上がり具合が面白かった。早く活躍したいのになかなか悪人が現れず、ついには待ちきれずに自分から乗り込んでいく。しかも正義が暴走しすぎて、やっていることがもはや悪人と何も変わらなくなってしまっていた。正義とはかくもあやふやなものだということを教えてくれている。

 

 きっと軍人も新しい武器を手に入れたらこんな風にうずうずしてしまうのだろうなと容易に想像できてしまう。軍人が好戦的になるのも納得だ。

 

 ラストは妻を奪った男の元に乗り込む主人公。勇ましく戦うが、よく考えると主人公がヒーローの格好をしている必然性は全く無くて、普通に戦っても結果はさして変わらなかったはずだ。つまり、ヒーローのコスチュームは自分を鼓舞するためにあるということがよく分かる。人が自信を深めるために化粧をしたり、入れ墨したり、聖書を持ったりするのと同じだ。

 

 つまりこの映画は、世の中を変えようとするヒーローの物語ではなく、自分を変えようとする男の物語なのだ。彼の最終の目的が悪を倒すことではなく、妻を取り戻すことだったことからもそれが分かる。ラストは、それでいいの?と思わなくもなかったのだが、彼がそれをネガティブではなく、ポジティブに受け止められるようになっているからそれで良かったのだろう。

 

 一言では表現しづらい、独特な世界観を持つ映画だった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/出演 ジェームズ・ガン

 

製作総指揮/出演 レイン・ウィルソン

 

出演 エリオット・ペイジ/リヴ・タイラー/ケヴィン・ベーコン/グレッグ・ヘンリー/マイケル・ルーカー//ショーン・ガン/リンダ・カーデリーニ/ネイサン・フィリオン/ロブ・ゾンビ

 

音楽 タイラー・ベイツ

 

スーパー!(字幕版)

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