★☆☆☆☆
あらすじ
砂漠で発見したミイラを蘇らせてしまった男は、悪の神に体を乗っ取られそうになる。
1932年の映画「ミイラ再生」のリブート作品。110分。
感想
冒頭で、古代エジプト時代に王女がミイラにされた経緯が延々と紹介され、タイトルバックが出て、その後ようやくトム・クルーズ演じる主人公が登場する。そこから始まるつかみの冒険活劇風シーンが空回り気味で、最初から色々と不安になってしまった。
やがて女ミイラが復活し、主人公は彼女の思惑に巻き込まれていく。だが、段々と彼らが何をやっているのか、話が見えなくなってきた。恨みを持った王女がミイラとして復活したのはいいが、その先で皆が何をしようとしているのかが分からない。
これはそもそもの王女の話が分かりづらかったことに問題がある。王になれないことに怒り、悪魔に魂を売ったのは分かる。だが、悪の神に身体を与えようとするのがよく分からない。
彼女は強大な能力を持ったミイラとして復活したのだから、もうあとは好きにやったらいいじゃない、と思ってしまう。そもそも復活して彼女が何をやりたいのかもよく分からないのだが、それはともかく、なぜそこまで悪の神を人間に憑依させることにこだわるのかは見えてこなかった。
主人公側から見ても、ミイラに狙われ、悪の神に憑依されそうになっているのを阻止しようとしているらしいことは薄っすらと伝わってくるだが、憑依されたらどれだけヤバいことになるのかは分からない。だから、見てる方としては切迫感がない。ミイラに近づかなければいいだけじゃない、と思ってしまう。なんなら主人公は、ミイラに思い入れなんかないのだから、積極的に関わるのはやめて普段の生活に戻っても支障はないような気さえする。
両者がやろうとしていることにピンと来ていないから、ストーリーに感情移入できない。よく分からないままに流していた冒頭の話が、ボディ・ブローのように効いている。
おそらくは、乗り移ろうとしている悪の神の存在感が全くないのがいけないのだろう。彼の存在をちゃんと見える化して、ミイラに早くやれと恐喝し、その恐ろしさを見せつけることで、こいつに乗り移られたらヤバい、と思わせなければいけなかった。彼の存在感がゼロなので、無視しても問題ないような気がしてしまう。このことは、クライマックスの分かりづらさにも影響を与えてしまっている。
そしてここに、ラッセル・クロウ演じる博士率いる謎の組織が絡んでくるからさらにややこしい。MCU的なダーク・ユニバース構想があったためなのだろうが、この部分は不要だった。それどころか早い段階で復活したミイラを易々と捕獲したことで、たいした相手ではないような印象を与えてしまっているので害悪ですらある。これなら主人公が頑張る必要はなく、彼らに任せておけばいいだけだ。ジキルとハイドを念頭においた博士の分かりづらいキャラ設定も混乱のもととなっている
その他にも、主人公のキャラやヒロインとの関係の描き方が甘いし、コメディシーンは笑えないしで問題ばかりだ。ミイラに生気を吸われた人間がゾンビ化するのは分かるが、十字軍騎士団のミイラたちが勝手に動き出したのはどういうシステム?となってしまったし、クライマックスで主人公がミイラから剣を奪還した方法のショボさには失笑してしまった。
いろんな要素を中途半端に詰め込んだだけの、ブラッシュアップが何もされていない映画だ。普通に、よみがえったミイラが大暴れし、それを倒す物語では駄目だったのだろうか。再び冒険の旅へ!みたいな次作を見据えたエンディングも、いやいや今回何も冒険なんかしてないから、と白々しい気分になってしまった。
スタッフ/キャスト
監督/製作 アレックス・カーツマン
脚本 デヴィッド・コープ/クリストファー・マッカリー/ディラン・カスマン
出演
アナベル・ウォーリス/ソフィア・ブテラ/ジェイク・ジョンソン/コートニー・B・ヴァンス/ラッセル・クロウ/マーワン・ケンザリ/ハビエル・ボテット
音楽 ブライアン・タイラー
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