★★☆☆☆
あらすじ
ついに機は熟し、吉良邸への討ち入りを決意する大石内蔵助。
感想
前編で前振りが終わり、後編はいよいよクライマックスがやって来ると期待していたのだが、肝心の討ち入りは手紙で事後報告されるだけだった。拍子抜けしてしまったが、原作でも討ち入りそのものはじっくりと描いていないようだ。
有名な話なので敢えて描かないパターンを選択したのだろう。何度も戦国時代の話をループしているNHKの大河ドラマでもたまに見られる手法だ。だが忠臣蔵を知らない現代の人や外国の人には何がなんだか分からなくなってしまうデメリットはある。
ちなみにDVDの特別映像にこの映画で建築監督をしていた新藤兼人のインタビューがあり、討ち入りのシーンをやらなかった理由は、監督がやるなら本当に人を斬る映像が欲しいと言っていたけど無理だから、と言っていて笑ってしまった。ダチョウ倶楽部にいられなくなった南部虎弾のエピソードを思い出すが、監督はいい意味で狂ってる。
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前編序盤の刃傷沙汰以降は、会話中心の地味な展開が続く。一応は長回しなどで映像的なダイナミックさはあるのだが、ヤマ場だと思っていた討ち入りもないままに長い後日談が始まるので、単なる消化試合を見ているような気の乗らなさがあった。関係のあったある志士の本心を確かめに男装してやって来た女の話も、最初は胸に迫るものがあったが、言い分がわけが分からなくなっていき、話も長いしで段々と冷めてしまった。
ただこの映画で討ち入りから切腹までにかなりの間隔があったことと、切腹が一人ずつ行われたことを知れたのは収穫だった。ついに宿願を果たした高揚感のまま切腹したのかと思っていたが、こうも期間が空けば冷静になって怖気づいてしまいそうだ。
また皆で一斉にではなく、ひとりずつ行われる切腹も、順番を待っている間が辛そうだし、その十何人分の切腹を次々と見届け続けなければならない検分役も辛かったに違いない。中には楽しめる人もいるのかもしれないが。
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ちゃんと前提となる知識があり、色んなパターンの物語を見た後に見るにはいいかもしれないが、あまり知らないままに見るには不向きなタイプの忠臣蔵だ。
スタッフ/キャスト
監督 溝口健二
脚本 原健一郎/依田義賢
出演 四代目河原崎長十郎/三代目中村翫右衛門/五代目河原崎国太郎/市川右太衛門/海江田譲二/中村鶴蔵/川浪良太郎//高峰三枝子
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