★★★☆☆
あらすじ
離婚調停中で子供の親権を確保するために急ぎ入居したマンションで、次々と奇怪な現象に遭遇する女。
感想
外ではしとしとと雨が降り続き、あちこちに水たまりができて、部屋にはジメジメとした湿気が満ちている。水のイメージに満ちた映像だ。物語の世界観がうまく表現されている。
序盤は主人公が一人娘と共に引っ越してきたマンションで、奇妙な現象に次々と遭遇する様子が描かれる。古ぼけたうらぶれたマンションで、他の住人の気配はほとんどなく、無愛想で無反応な管理人、要領を得ない不動産屋、水漏れする天井と、ホラー映画特有のなにか嫌な感じがよく表れている。大騒ぎするほどではないが、地味にどこかひっかかる出来事が次々と起こることで、そのイヤな感じが徐々に増幅されていく。
そしてそれがリミットを越えた時、クライマックスが始まる。一気にたたみ掛けるように恐ろしい展開が起きるのかと思ったが、案外とおとなしかった。それまでに大体の物語のあらましが予想出来てしまっていたことも影響したのかもしれない。まったりとしたテンポでクライマックスに向かっていく印象だ。
ただ考えてみれば幽霊とは、恨みがある相手でもなければむやみやたらと人を襲うものではないので、仕方がないのかもしれない。どちらかと言うと人間を積極的に襲うというよりも、つい迷惑をかけてしまう存在だろうか。心を病んだ人が他人に迷惑をかけてしまうのと似ている。
だから、正直なところ、クライマックスでの主人公の行動には、なんで「アルマゲドン」みたいになっているのだ?と笑ってしまったのだが、あながち間違っていなかったのかもしれない。主人公は、無念で憑りついてくる幽霊に同情し、受け入れてしまった。娘を守るためでもあったが、完全なる自己犠牲の精神だ。
ホラーなのに泣かせようとする展開にも呆れる気持ちがあったが、そもそも幽霊とは淋しく物悲しい存在だった。何かしらの未練があるから成仏できずにいる。
ジャパニーズ・ホラーの基本はしっかりと押さえ、物語自体も分かりやすかったのだが、20年も前の作品だからか、怖さを感じることはほどんどなかった。
それからどうでもいいが、流れっ放しの水道の蛇口は気付いたらすぐに閉めろよ、と言いたくなってしまうシーンが何度かあった。
スタッフ/キャスト
監督 中田秀夫
脚本
鈴木謙一
原作 「浮遊する水」 「仄暗い水の底から (角川ホラー文庫)」所収
出演
小日向文世/菅野莉央/水川あさみ/小木茂光/徳井優/諏訪太朗/品川徹
音楽 川井憲次
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