★★☆☆☆
あらすじ
就職した会社である警備員によって次々と人が殺され、恐怖に陥る女性社員。
感想
ひとりの警備員が理由なき殺人を次々と行っていく物語。ただ、30年前の映画だからなのか、全然怖さがない。もうちょっと得体のしれない恐怖を感じても良さそうなものだが、何かが足りないような気がする。
ただ、不安な気持ちになるような陰影をつけた映像だったり、ナチスを思わすような警備員の制服に編み上げブーツ、そして赤い腕章を付けた衣装だったりと、色々と工夫をしているのはよく分かる。それでもどこか物足りないのは、殺人鬼が迫りくるような演出が少なかったからかもしれない。多少怖かったのは、殺人鬼が被害者の骨をゆっくりと折っていく描写くらいだ。
殺人鬼だけでなく登場人物たちがみな怪しげなキャラクターで、全体的にいかがわしい雰囲気が漂っているのは面白い。最後に殺人鬼を仕留める長谷川初範演じる人事部長も、社長にすらデカい態度をとる謎の男なのだが、結局彼がどういう男なのかは最後まで明らかにされない。
それから殺人鬼に閉じ込められ、皆が一室に立てこもっている時に、一人の女性が疲れて眠ってしまうのがちょっと意味が分からなかった。そんな状況でよく眠れるなと思ってしまった。
雰囲気はあったが、退屈な時間が多い映画だ。でも今考えるとこの規模の映画のわりには出演者が豪華で、世界的監督の初期の作品でその片鱗も窺えるので、見ておいて損はないかもしれない。
ところで殺人鬼が会社の地下で暮らしている描写は、韓国映画「ほえる犬は噛まない」となんとなく似ているような気がしたが、ポン・ジュノ監督はこの映画の影響を受けていたのだろうか。単なる気のせいかも知れないが、そういうつながりを考えてみるのも面白い。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 黒沢清
出演 松重豊/久野真紀子/長谷川初範/諏訪太郎/緒形幹太/大杉漣/内藤剛志/洞口依子/加藤賢崇
音楽 岸野雄一