★★★★☆
あらすじ
大学教授の仕事にありつけず焦る男は、団地の他の住人が飼う犬の鳴き声にイラつく。韓国映画。ポン・ジュノ監督の長編映画デビュー作。
感想
原題を直訳すると「フランダースの犬」ということで、そのまま邦題にしづらいというのは理解できるが、なんでこんな意味深なタイトルにしたのか謎だ。英題も同じなのでそちらからそのまま流用しただけなのかもしれないが、これだとずいぶんと余計な意味合いが映画に加えられてしまっているような気がする。なんか腹立たしい。
団地の他の住人たちが飼う犬の鳴き声がうるさいと実力行使に出る男。犬を追いかけ懲らしめようとする姿はコミカルなのだが、最終的にはコミカルの域をはみ出てしまうような残酷な行為にまで発展するので戸惑う。この映画はそういうコミカルなようなホラーのような、簡単にはジャンルを特定できないような様々な要素が入り組んだ作品となっている。ただ前半は調子外れでテンポが悪く、いまいち面白みにかける。時おり流れるのんきなピアノ曲も場にそぐわない感じがした。
だが男に変わって団地職員の若い女がメインとなる後半になると俄然面白くなってきた。男にとって皮肉な展開で、前半のフリが効いてきたという事もあるのだが、まず何よりも団地職員を演じるペ・ドゥナが魅力的だ。自分に正直で、誰かの役に立ってヒーローになりたいというまるで純真な少年のようなキャラクターを好演しており、リアクションも可愛らしい。少年というよりも犬のようと言った方がいいかもしれない。身重の妻に虐げられ、理想と現実に悩む無職の男に「フランダースの犬」のパトラッシュよろしく寄り添い、彼の窮地を救う。
ところで男の近隣の犬たちに対する酷い仕打ちはほったらかしなのかと一瞬思ったのだが、彼女に罪の告白をしたシーンで贖罪されているという事なのか。ままならぬ現実を受け入れるために闇を抱えざるをえなかった主人公と、そんな現実の中で正しき光を与え続けようとする女の対照的なラストが印象に残る。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ポン・ジュノ
出演 ペ・ドゥナ/イ・ソンジェ